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百年企業のれん三代記

神田で三代以上のれんを守ってきた老舗にスポットをあて、初代から現在に至るまでの歴史を写真と文章でご紹介します。

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第54回 有限会社悠久堂書店

お話:3代目 諏訪 雅夫さん(記事公開日:2020年9月30日、文:竹田令二)

■初代 諏訪 久作(明治22[1889]年生~昭和49[1974]年没)

 新潟の長岡の出身で、畳屋の次男坊です。軍役で明治42[1909]年12月から3年間、近衛師団に入営のため上京しました。除隊後同郷である一誠堂書店の初代・酒井宇吉さんのところで半年くらい世話になり、大正4[1915]年1月8日に現在地で創業しました店名の「悠久堂」は長岡市内にある山「悠久山」からとっています。
 最初のころは、一般の古本を扱っていました。買い入れに地方を歩き回ったようです。その時に集めたこけし100本以上が自宅の書斎のケースにあります。戦災で焼けなかったので、80年くらい前の古いものもあります。コレクターというわけではなく、単なる土産だったようです。扱う古本のジャンルも一般的なもので、お客様の要望を感じ取って仕入れていました。よく、社長の趣味が反映しているのではと聞かれますが、やはり、商売、お客様の好みをいち早く感じ取り、仕入れているのです。
 昭和22[1947]年に有限会社化しました。
 大正12[1923]年の関東大震災では店も本もきれいに燃えてしまいました。でも、古書店は全国組織(全国古書籍商組合連合会=全古書連、会員2200人)で、地方の古本市にも会員なら参加できます。東京に在庫がなくても地方から入ってくるのです。100年以上前からあるシステムです。阪神大震災の前に、神戸の人が、「東京はいずれ大地震で灰になる」と多く仕入れをしていましたが、阪神大震災に遭い、すべて燃えてしまったという話もあります。
 戦争のときは、在庫を疎開させた店もあり、疎開先が燃え、こっちが残った、なんていう話もあります。
【初代 久作氏】
【軍隊手帳と創業時営業許可証】

■2代目 諏訪 正二(大正13[1924]年生~平成22[2010]年没)

 父です。鈴井家から初代の娘・久美子に婿入りし、昭和49[1974]年に跡を継ぎました。山の本の扱いが増えた時代です。創業50周年には山の本のカタログを出しました。というのも、芳文社をはじめとした山関係の本を出していた出版社の本の価格が上がって、古本の需要が増えたのです。当時は山の文学書も高かったですね。今は山の本の内容も変わり、安くなっています。
 父が山登りが好きだったからというのではないのです。うちは、美術展のカタログ、料理の本、ビジネス書などの扱いも多いのですが、昔は美術展のカタログなどは珍しかったりしましたが、今は日本中で美術展が始終開かれているので、量が莫大になり、場所ばかり取っています。今は河鍋暁斎や歌川国芳など武者絵や妖怪物がタトゥー関連の方に人気です。特に外国の方が買っていかれます。
 時代によって扱う分野も変わります。そのどこを狙うか、ですね。
 父は10年前に亡くなりました。
【3代揃って。中央が2代目 正二氏。左は息子の雅夫氏(3代目)、右は孫の雅也氏(4代目)】
【創業50周年記念目録山岳特輯号(左上)、雑誌『山と渓谷』(昭和49[1974]年10月号)(右上)、大正14[1924]年の古書販売目録(右下)】

■3代目 諏訪 雅夫(昭和25[1950]年生~ )

 私が店を継いだころは西洋料理に関心が集まり、ワインが流行し始めたころでした。それで、山の本の次は料理の本となりました。もっとも、私自身は食べることが好きですけれどね。
 今は中国のものがよく出てきています。業界全体を見てもそうですね。日本の陶芸ものなどはだめですね。集める人がいないのでしょう。中国の書道関連は人気です。中国の文化大革命(1966~1976年)以前に仕入れたものが人気です。「文革以前のものは本物」とみているのでしょう。それを買い戻している感じです。そういった理由で日本の仮名文字は人気がありません。ただ最近は高いものを買う人と、安いものを買う人で二分化しているようです。以前のような爆買いはなくなってきました。
 50年以上前に買っておいたものが今高く売れているのです。ただそれがいいのか。回転率がいい方が利益が出るかもしれません。
 中国人はキャッシュレスです。ですからうちでも昨年から「アリペイ」が使えるようにしています。こちらは店頭での支払いで使用し、手数料はかかりません。海外送金ですと、トランスファーワイズ・ジャパン社を使用しています。これにより4,000円かかっていた手数料が170円となりました。
 現金⇒カード⇒QRコードと、決済はここ半年で一気に変わりました。業界全体でいえば数千万円は違ってくるでしょう。「ペイペイ」が使える表示は50年以上使っているレジスターの横にあります。レジスターは引き出しが木製、「譲ってくれ」というお客様もいますが、売り物にはしていません。
 悠久堂は5年前、平成27[2015]年に創業100周年を迎えましたが、古書店は時代とともに変わります。うちは狭いところを狙って特色を出してきましたが、皆さんそうだと思います。それで業界全体が動いているのです。古本市場の参加者も20年くらいで半分くらい変わっています。百科事典も昔は本棚にずらっと並べるため、高く売れましたが、今は本棚のある家も少なくなっています。今後は何が残るかわかりません。だって、新刊書出版社は20年間ずっとマイナスでしょう。大手だってマンガの電子化でようやく黒字ですから。
 古書には資料的な価値のほか、装飾的な意味もありますが、モノを売る、特に情報を売る商売はなくなっていくのかもしれません。漫然とやっているだけではやっていけない時代になってきました。全古書連と東京都古書籍商業協同組合の理事長を今年8月まで2年間、務めています。
【3代目 雅夫氏】
【半世紀以上活躍しているレジスターには電子決済のQRコードが添えられている(上)。100周年の記念手拭い(下)】

■4代目 諏訪 雅也(昭和53[1978]年生~ )

 長男です。うちは有限会社で、役員は取締役社長の私だけなので、跡継ぎでもいまはただの社員です。長女も妻も店を手伝う家族経営です。長男は中国関係をすべて担当しています。娘が2人いますが、5代目は……。長女からは「お父さん、私がやるときのためにいい人雇っておいて」なんて言われていますが。
【4代目 雅也氏(右)。3代目雅夫氏(中央)、3代目妻・清子夫人(左)と】
●有限会社悠久堂書店
千代田区神田神保町1−3−2
電  話:03-3291-0773
営業時間:平日 10:15~18:45、祭日 10:45~18:15、日曜休・年末年始お休み
https://yukyudou.com/

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