■第三話 サイカチという樹木から坂の名が?
JR水道橋駅から駿河台に登る坂道、その坂の名がサイカチ坂と呼ばれ、資料によれば大正14年(1925年)頃には道端に潅木類の生茂った土手で、サイカチの木は生えていなかったらしい。しかし18世紀末の古書(新編江戸史)等によれば、江戸時代にはサイカチの木がかなり多く植えられていた様子であった。その後年月の移り変わりによって有ったりなくなったりしているので、サイカチ坂の木を植えてみようと思い立った。
当時東京都の公園緑地部、神代苗圃(現在の神代植物園)で3本の苗木(樹高3m前後)を捜し出し、都から区に保管換えの手続きをし、掘り取り、運搬し、1日がかりで植え込んだ思い出が懐かしい。植付け当時は3本とも同じ形状に近かったが、40年以上経た現在、それぞれの個性が出て異なった樹木のようにも見える。
強い整枝をしない年には、花と実(サヤ状)を多く見ることができる。その後周辺には4本の後継樹が叢生している。晩秋すっかり葉を落とした後に、ねじれた形でぶら下がった変わった実が見られる。
マメ科・落葉高木・雌雄同株・開花期5月〜6月・結実期9月〜10月。実は薬用にしたり、石鹸の代用品に使われた時代もあったという。 |
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