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神田資料室

KANDAルネッサンス 96号 (2012.11.25) P.5〜7 印刷用

座談会にご登場いただいた皆さんのお店をご紹介します!
連雀町老舗めぐり

若旦那はアイディアマン! 冬に嬉しいあんこう専門店
いせ源

あんこうの刺身は専門店だからこそ提供できる新鮮さ
 冬が近づき、鍋のおいしい季節がやってきた。老舗街、連雀町にある、あんこう料理専門店「いせ源」に足を延ばしてみるのはいかがだろうか。
 現在7代目を数えるこちらは元々京橋のどじょう屋を出発としている。初代が店を始めたのは天保元年(1830)、その頃は店の名前もまだ「いせ庄」であった。神田へ移ってきたのは2代目、源四郎のときで、その際店名も「いせ源」と改めた。以来神田で180年あまり、店は7代目の立川博之さんへと受け継がれた。
 立川さんは優れたアイディアマン。20年ほど中断されていた、店先に展示するあんこうの氷締めを復活させたり、あんこうの吊し切り見学会を始めたりと様々な試みに挑戦している。どちらも反響が大きく、いせ源の名物といっても過言ではないだろう。
 また資源管理の観点から、懇意にしているあんこうの漁獲地に禁漁期や目方での漁獲制限など協力を働きかけている。前述した新たな試みも、これから先のことを見据えたことであり先を見据える経営者としての視点も持っている。
 そして店の味を守る若旦那として、伝統をしっかりと受け継いでいる。幼いころから帳場の祖父に憧れを抱き、父から教わった割下や出汁は代々伝えられてきた、まさに店の味。ただしそこは詳細なレシピなどない職人の世界。熟成や火加減、蒸らす時間などの微妙な加減には立川さんの感性が生きている。
 12月に入ると懇意にしている漁獲地で漁が始まり、徹底管理されたあんこうが届くそうだ。そこでおすすめなのは、あんこうの刺身。淡泊ながら旨味に富んだ味は、新鮮だからこそ味わえるこの時期の特別な一品だ。そして、刺身を提供できるのは12月から4月までの期間限定となっているので、ぜひご賞味いただきたい。

千代田区神田須田町1-11-1
tel.03-3251-1229
営業時間 昼11:30~14:00、夜17:00~22:00、日休
(12月~3月は日曜も営業、4月~9月は土日祝休)
http://www.isegen.com/


変わるからこそ変わらない伝統の味
神田志乃多寿司

甘さが懐かしいお寿司たち。11月半ば頃からは柚子が入る
 そう語るのは神田志乃多寿司の4代目、原田勝信さん。18歳で青森から上京し、店に入った原田さんはすでに40年近く老舗の味を作り続けている。
 志乃多寿司は明治35年(1902)、人形町にある志乃多寿司総本店から初代、原田直平がのれん分けして神田に開いたことが始まり。当時は淡路町がまだ佐柄木町と呼ばれていた頃の話だ。区画整理で多少店は移動したが、神田の味として110年に渡り寿司を作っている。
 志乃多寿司といえば、何と言ってもお稲荷さんは外せない。甘く煮た油揚げに、赤酢を使った酢飯。季節によって中に柚子が入っていたり、えんどう豆が入っていたりするが、基本的にごくシンプルだ。
 しかしこのシンプルさゆえにごまかしがきかず、日々味を守ることは難しいという。原田さんが言うには、砂糖の精度や塩の製法など、材料の細かな変更に伴って味を変えているのだという。つまり同じ分量、作り方をしていても材料が変われば味が変わってしまうのだ。そのため材料が変わるごとに調整を加え、常に味を保っているそうだ。また味は作る自分が納得しても、お客様に納得していただかなければ意味がないと常に心がけている。
 それはまだ先々代がご存命の頃のこと。味付けをしていた原田さんに先々代が調子を尋ねたところ、「大丈夫です」と答えて叱られたことが記憶に残っているからだと語る。
「お前に味の何がわかるって、すんごい怒られましたよ。ちょっとやっただけで味がわかったようなことを言うんじゃないって。そのとき会長は65歳くらい。『俺(会長)はまだ味はわからないんだ!』って」
 お客様の立場になって物を考えろ。代々受け継がれる言葉は志乃多寿司の味となって、今も店に宿り続けている。

東京都千代田区神田淡路町2-2
tel.03-3255-2525
営業時間 7:30~18:00、火休(祝日の場合は振替)


女性3人で営む、家庭的なクリーニング店
松林舎

左から、澄子さん、すみさん、恵美さん
 現在店に立っているのは、先代・一郎氏の妻すみさん、先代の妹澄子さん、そして4代目田中恵美(さとみ)さんの3人だ。
「初代は大八車、2代目はリヤカー、3代目はバイク、そして今は自転車で配達をしています。2代目・善作さんの頃は大きな釜に薪で湯を沸かし、その中に洗濯物を入れて洗っていました。当時ワイシャツは流行のはしりで、糊を強くして仕上げるのが人気だったようです」
 恵美さんがお店に入ったのは15年前。
「大学卒業後はOLをしていたので、クリーニングの仕事は店に入ってから始めました。でも小さい頃から見ていたので、だいたいのことはわかりましたね」
 昨年先代が亡くなり、急遽恵美さんがクリーニング師の国家試験を受けることに。独学で約1ヵ月勉強し、見事一発合格したという。
 スーツのズボンも厨房の作業着も同じように折目をつけてアイロンがけをするほど、丁寧に仕上げるのが松林舎流。その仕事に惚れて親子代々通っている人や、よそ行きの大切な洋服を持ってくる人も多い。
「うちでおしゃべりして帰るお客様がたくさんいます。『ここに来るとほっとする』と言ってくれて、嬉しいですね。女3人だから家庭的で話しやすいんじゃないでしょうか。仕事が終わると、毎日ここで3人で晩酌するんですよ」
 今後もクリーニング受け渡し業として、ずっと松林舎を続けていきたいと恵美さん。
「神田のお母さん」たちの楽しいお話に、つい長居したくなる店だ。


千代田区神田淡路町2-4
tel.03-3251-6689
営業時間 月-金8:00~18:30、土8:00~12:00日祝休


老舗が一新、こだわりの蕎麦割烹
松竹庵 ます川

一期一会の食材たち。とろみのある蕎麦湯もまた格別
 その立役者となったのは8代目となる若旦那、益川雄さんだ。元スキーのモーグル種目アジアチャンピオン。10年間日本代表にいたという彼は引退後日本料理とそば打ちを学び、今や立派な老舗蕎麦屋の8代目を務めている。
 4年間の休業期間中に家族3人で何度も話し合って「小さくてもいいものを出す」店にしようと決意。再出発を果たした『松竹庵 ます川』は、それまでの機械打ちだった蕎麦を手打ちにし、ご飯ものもすべてやめ、日本料理と蕎麦を出す蕎麦割烹へと生まれ変わった。
 特にこだわったのは、店の顔でもある蕎麦。石臼で粉を挽くところから作るため香りがよく、厚みのある麺はしっかりとコシのある食感が珍しい。ゆくゆくは蕎麦農家と直接取引きし、皮を剥くような過程からやってみたいと語る、雄さんのこだわりは半端ではない。
 また、毎朝築地に行って仕入れてくる食材は新鮮そのもの。穴子、しし唐、しいたけといった定番のものから、ウニ、シャンピニオン、黄色ズッキーニなどの珍しいものまで、カウンターにはその日一番おいしいものが並んでいる。
 そのため毎日が旬のもので溢れ、お店に来たその時においしいものがおすすめだという。盛り付けも随時改良しているため、その日食べることができるのは、まさに一期一会のものなのだ。
 それでもあえておすすめするなら、「活車海老天せいろ」(1800円)。目の前で捌かれる車海老二尾に、その日の野菜の天ぷら二種がついている。ふわふわの海老と瑞々しい野菜、そして締めの蕎麦を粋に啜りたい。
 変わりながらもいい風情を残したまま変わってほしい。神田の街に対する雄さんの思いは、自らのお店に対する思いにも繋がっているのだろう。

東京都千代田区神田淡路町2-6
tel.03-3251-1043
営業時間 昼11:30~15:00、夜17:30~21:00、土日休



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