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KANDAルネッサンス 91号 (2010.06.25) P.2〜3 印刷用

アート×街、東京×地方、人×人…… あらゆるものを「つなぐ」場所

“3331 Arts Chiyoda”

 閉校になった秋葉原の旧練成中学校を改修・再利用し、今年6月いよいよグランドオープンした大型アートセンター「3331 Arts Chiyoda」。「アーティスト主導」「新しい形の参画交流」「領域横断型スタイル」……これらのキーワードで語られる「3331 Arts Chiyoda」(以下3331)とは、一体どのようなスペースなのだろうか。まずは統括ディレクターの中村政人さんに話を聞いた。

場に宿る記憶の力が、表現を喚起する

 自身もアーティストであり、1997年からは「アーティスト・イニシアティブ・コマンドN」というアーティストグループの代表として、地域とのコミュニケーションを生み出す様々なアートプロジェクトを行ってきた中村政人さん。その頃から、「秋葉原や神田界隈にアートセンターをつくりたい」という思いがあったという。
「秋葉原は『物をつくる』という人間の根源的な欲求が高いところ。また神田には古本屋や大学がたくさんあって、情報が集まってくる。この地域が培ってきたある種カオティックな(混沌とした)魅力が、僕らの文化的・芸術的な活動を後押ししてくれるような感覚があるんです」
「ゲニウス・ロキ(地霊)」とも呼ばれるその土地独特の空気が、人が何かを創造するときの動機や原動力になると中村さんは言う。
「真っ白な状態からいきなり何かを創るのはとても難しい。手垢や人の温かみのような、場の記憶が宿っているところからしか、表現は喚起されない」
学校ならではの懐かしい雰囲気に
ここに残された記憶を感じる。
旧練成中学校跡地の利用についても、中村さんはこの校舎を最大限に生かすことを第一に考えた。
「校舎の周辺には、ここで学んだ思い出のある人たちがたくさんいる。その記憶が残っているうちに、文化的な活動を始めないと」
 こうした中村さんの思いとアイデアが採用され、校舎はアートセンターとして活用されることになった。
 改修にあたっては、今まで完全に分離されていた校舎とその隣の公園をつなげ、さらに公園側を正面玄関にすることによって、よりオープンな空間に。以前から公園にあった楠の大木が伸び伸びと枝を広げ、3331のシンボルツリーのような存在になっている。

様々な魅力が同居する「街」のような場所

 3331の中にはギャラリーのほか、デザイン事務所、環境事業に取り組む企業、大学が運営するアートスペースなど様々な団体が入居している。
「入居者それぞれに固有の魅力がある。それぞれが専門の立場で影響を与え合い、魅力を共有していけば、それはさらに深みを増していく。いい街ってそうじゃないですか。例えば探していたラーメン屋の隣に美味しそうなイタリアンの店を見つけるように、様々な誘惑が同居している。それに引き付けられて、深みにはまっていくわけです。3331ではそういう誘惑をプログラムや作品、またこの場の力によってつくっていく。そしてそれが外にもうまく伝わっていくようにしたい」
「アート」ではなく「アーツ」という名前がついているとおり、ここには美術、音楽、身体表現、ファッションなど様々な「表現活動」がある。そして作り手には大人や子ども、専門家や趣味の人もいて、国籍もいろいろだ。この建物を「あらゆる要素が重層して魅力となる、ひとつの『街』のような場所にしていきたい」と中村さんは語る。

クリエイティビティは誰もが持っている

 アートというと一部の人の特権のように思われがちだが、いま、より「社会全体のもの」という方向に向かっていると中村さん。
「本来誰の中にもある『表現したい』という気持ちを閉じるように、教育課程が組まれ管理社会が重圧を与え続けている。しかしどんな仕事にもクリエイティビティ(創造性)は必要。一人のカリスマがつくるものだけがアートではなく、例えば地域に受け継がれている風習だったり、人の気質だったり。こう日常に潜みアートはある」

 
佐藤直樹氏デザインによる、「3331」を視覚化したロゴマーク。
携帯のアンテナ表示にも、メスシリンダーの目盛りにも見える。
横にすると、何だか憎めない顔に。


「3331」という名称は「江戸一本締め」の「シャシャシャン、シャシャシャン、シャシャシャン、シャン」を数字で表記したもの。神田祭でも見かける光景だが、この江戸一本締めが始まると途端に空気が張り詰め、人々の気持ちが一点に集中する。おめでたい席で感謝の意を込めて行われてきたこの風習も、まさにアートだ。
 中村さんは、こういった地域の文化をどのように読み取り、伝えるかが大事だという。
「日本では、政治・経済についてはたくさん議論されているのに、文化の面では全くそれがなされていない。日本のアートの底力は、まだまだあるんですよ。それに光を当てて発信していかないと」
ひょっとしたらこれから、文化が街を先導する時代が来るかもしれない。その方向を灯台のように照らす3331のイメージが浮かんで、ワクワクした。これからの展開に引き続き注目したい。(文・鷹野希)



なかむら・まさと
アーティスト、「アーティスト・イニシアティブ・コマンドN」主宰、東京藝術大学美術学部絵画科准教授。
1963年秋田県大館市生まれ。「美術と教育」「美術と社会」の関わりをテーマに、日本および海外の
様々な地域でアート・プロジェクトを進める。「3331 Arts Chiyoda」統括ディレクター。



■3331 Arts Chiyoda
東京都千代田区外神田6-11-14
tel.03-6803-2441
http://www.3331.jp/



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