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KANDAルネッサンス 93号 (2011.06.25) 印刷用
表紙◆「神田日和」のこぼれ話19

山形屋紙店

いさかかつじ

 
 カクンと時代が曲がる。多くの人の人生が一瞬にして変わる。3月11日はそういう日だった。そんな想いをかかえながら神保町交差点近くのさくら通りにある「山形屋紙店」でお話をうかがった。

命の大樹 女神桜
 店の奥に和紙の端材で作られた「命の大樹 女神桜」という半立体のパネルが飾られてあった。素朴だがのびのびしていて、やわらかい色合いが気持ちいい。よく見ると樹の幹の部分が少しふくらんでいる。なんとなく気になってたずねてみたら、テレビからのあのすさまじい映像を見て[みんなが幸せに暮らせますように]という意味の言葉を忍ばせてあるという。表からは見えない。聞かれなかったら言うつもりはなかったそうだ。こういう心のあらわし方を山形屋紙店の方はしていた。声高な鎮魂だけがすべてではない。
 
 山形屋紙店は明治12年に、初代の田記俵次郎氏によって創業された。お店のあるこの場所は江戸時代の旗本、神保長治の屋敷があったところで「神保町」という町の名前の由来になった。その同じ所で132年営んでいる。神保町という時間が続いている。
 

店の裏手にある蔵
 ビルにかこまれていて、あまり目立たないが、お店の裏手に大正元年に建てられたレンガ造り3階建の蔵がある。日本各地から集められた和紙は、ここで静かに寝かせられて出番を待つ。和紙は寝かせると書き味がよくなるのだそうだ。そういえば、家を建てるための木材もしばらく寝かせておくのだと、ある大工さんに教わったことがある。そうしないと木が反って家が壊れてしまうそうだ。木が暴れると表現している。木材も和紙も生きている。
 この蔵は大正2年の神田の大火、関東大震災、東京大空襲にも耐え抜いた。蔵の中で守られていたおかげで戦後すぐに営業ができた。この蔵は山形屋紙店の命だ。
 昔は今とくらべものにならないほどの忙しさだったそうだが、今も日常生活の中で和紙の需要は多い。お話をうかがっている間にも、お客さんがお気に入りを探しに入ってくる。企業のご贔屓も続いている。昭和22年からの皇室のご用もそのひとつ。歌会初の和紙、園遊会の招待状、晩餐会の案内状やメニユー、ご記帳、天皇皇后両陛下の大きい名刺のようなもの(懐紙)などの紙を納めてる。
 3代目の田記穣さんは「和紙の神様」と言われたぐらい和紙にくわしかった。今は田記常光さんが4代目。今回は3代目の奥様田記この子さんと、4代目の奥様田記有子さんにお話をうかがった。

 「命の大樹 女神桜」はお店の女性、紗智子さんが花びらを一つひとつ貼って作った。山形屋紙店は和紙の世界で超一流だと聞いたが、お店の方々が和紙を愛してるんだなあと実感できるお店だった。それがそう言われる理由なのだろう。
 和紙の「和」は「なごやか、おだやか、ほどよい、やわらぐ、なごむ、なかよくする、応ずる」などの意味もある。














山形屋紙店
東京都千代田区神田神保町2-17
TEL.03-3221-7829
http://www.yamagataya-kamiten.co.jp/
いさかかつじ:絵ッセイスト
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