KANDAアーカイブ

神田学会
お知らせ 神田資料室 神田マップ 神田写真館 百年企業のれん三代記 神田の花咲かじいさん 出版物紹介 神田学会とは 神田学会資料請求 関連リンク Perspectives in English 神田アーカイブとは リンクについて 問い合わせ

神田資料室

KANDAルネッサンス 92号 (2010.11.25) 印刷用
表紙◆「神田日和」のこぼれ話18

大和屋履物店

いさかかつじ

 
 お店は専大前交差点の角。明治17年(1884)の創業。ずーっとここで関東大震災、戦中戦後、高度成長、都電廃止、地下鉄工事、バブル、地上げなどの時代の荒波をくぐり抜けてきた。

鼻緒をすげるご主人
 ご主人の小倉 進さんに鼻緒をすげるところを見せてもらった。「近ごろは下駄の鼻緒をすげられる店がほとんど無くなってしまった」と奥様のやす子さん。ご主人は子どものころ忙しく働いてる父のすげるのを見て自然に覚えた。職人というのは役割分担の各部分のエキスパートのことで、それが集まって一つのものが出来上がっている。下駄もそういった細かい部分の職人たちの腕で成り立ってるのだが、「鼻緒をすげる」など昔は当たり前だった仕事も、今では職人さんがいなくなってきた。

 職人の町、学生の町だった神田界隈には下駄や草履を扱う履物屋がたくさんあったそうだが、今ではわずかしかない。下駄をあまり履かなくなったこともあるが、多くの大学がキャンパスを郊外に移したことも影響してるとか。それでもいまだに大学の応援団の方々が買っていく。ある武道研究家の影響で一本歯の下駄を買いに来られる方も多くなった。ほかにも武道家だけでなくフルート奏者など音楽家にも一本歯の下駄が見直されている。姿勢や身体の使い方を正すのにいいそうだ。お話をうかがってる間にも何人ものお客さんがお店を覗いていく。白い上っ張りを着た板前さんらしい人が履物を選んでいた。

充子さんが染めた鼻緒
次女の充子さんは江戸型染作家として活躍してる。お店に充子さんオリジナルデザインの鼻緒や手ぬぐいが置いてある。粋な鼻緒にすげ替えると自分だけの気持ちいい下駄になり、履いてる人の心のたたずまいまで感じられるようになる。下駄は「台」と「鼻緒」で楽しむものなんだ。「和」の組み合わせ、「和」の生活、「和」の文化にとらわれないで、生活そのものを楽しむためにあるのだと気がついた。そんな時代の流れをくみ取って、2003年ごろ姉の佳子さんと妹の充子さん姉妹のセンスを生かして下駄がメインの和小物の店としてリニューアルオープンした。
「…その時々は大変でしたが、いつも下手な欲をださなかったことがよかった。リニューアルの時もそうだったけどいつも人の縁が力になってくれる」
という奥様の言葉には実感がこもってる。「家族」と「人の縁」の力。結局、これにつきるようだ。

 私の小さいころ、正月に新しい下駄をおろす習慣があった。ワクワクして新年を迎えた。それがいつの間にか単に昨日の続きになってしまった。下駄に新年を寿ぐ役割は無くなったが、もっと人生を積極的に寿いでもいいような気がする…。「自分へのごほうび」なんて小さく考えずに…。 












大和屋履物店
東京都千代田区神田神保町3-2-1 サンライトビル1F
TEL.03-3262-1357
いさかかつじ:絵ッセイスト
ページの先頭へ

戻る

ホーム ホーム