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KANDAルネッサンス 88号 (2008.12.25) P.2〜6 印刷用

特集 祝・本と街の案内所1周年

【座談会】本と街の案内所へいらっしゃい



靖国通りに面した一角に、赤い看板が目印の「本と街の案内所」がオープンして1年。本に関する情報はもちろん、神保町に関する様々な情報が得られる場所として、知る人ぞ知るスポットになりつつある。
案内を務めるスタッフに1年を振り返ってもらった。



中村佳史(NPO連想出版)
鈴木一郎(NPO神田雑学大学)
高山剛一(神田古書店連盟)
神原文江(千代田区立千代田図書館)
押田径子(千代田図書館コンシェルジュ)
高岡雅宏(神保町応援隊)


神保町に案内所ができた
——本と街の案内所(以下、案内所)がオープンするまでの経緯、ここに関わるようになったいきさつは?
中村 以前から神保町の案内所がほしいねっていう話をわれわれNPO連想出版(以下、連想出版)と神田古書店連盟(以下、古書店連盟)さんでしていたんですが、実際、場所やマンパワーの問題をどうするかでなかなか実現しなかった。その後、多くの方々のご尽力によりこの場所を借りられるようになったんですが、誰が責任をもって運営するのかという話になったときに、古書店さんたちは自分たちのお店で精一杯、区も予算設定が難しいということで、じゃあ連想出版が責任をもってやりましょうということに。立ち上げの段階で、NPO神田雑学大学(以下、雑学大学)や神保町応援隊(以下、応援隊)の皆さんが、案内所のボランティアスタッフとして名乗り上げてくださったので、ここに至っているわけです。
神原 千代田図書館では、昨年5月のリニューアルのときに、コンセプトのひとつに「千代田ゲートウェイ」というものを掲げまして、要するに千代田区の玄関口として、図書館の案内だけでなく街の案内もしましょうということなんですが、それを街に出てやれないかということになった。それで今年の5月から、図書館コンシェルジュが案内所の応援をさせていただいております。
高山 私が古書店連盟の役員になったのは去年の7月なんですが、それとは別に神保町エリアのガイドを4年前からやっていまして、千代田区の観光の本部が区役所にあるんですが、ガイドをするにも案内所がないのは変だよねという話が方々から出ていました。もちろん連盟のなかでもそういう話は前々からありましたが、去年、急展開で案内所が開設されることになり、自分としては古書店連盟としてだけでなく神保町のガイドとしても関わっていきたいと。
鈴木 雑学大学は今年で設立10年目に入るんですが、常に街とのつながりを考えて活動しています。昨年の図書館のリニューアルに際してもコンセプトについて意見を聞かれましたので、これからの図書館は人が情報をつないでいくことが必要ではないかと申し上げました。その後、案内所がオープンするという話を聞いて、スタッフとして案内所に立つのも街の人とつながりをもつという意味で大切だなと思いました。
高岡 僕の場合は、まず応援隊の意向として案内所に協力したいというのがあったんですが、応援隊のなかにもいろいろな人間がいまして、たまたま神保町の古本屋に詳しかった僕がここに派遣されたというかたちですね。
——古本に関する問合せが圧倒的に多いそうですが、本の案内に戸惑いや不安はなかったですか?
中村 ここの案内所に関していえば、こちらもボランティアベースでやっているので、案内する、教えるというよりも一緒に探しましょうというスタンスなんですね。ですから特にプレッシャーもなかった。古書店連盟さんからも「とにかくどこか一軒教えてくれればそれでいいから」と言われていましたし。探している本がどこに行けば手に入るのかわからない、そういう方が多くいらっしゃるので、とりあえず最初の一軒を見つけてあげる、お客さんを古書店につなげてあげるというのが案内所の役目だと思っています。案内の仕方をルール化したりマニュアル化したりすると、どうしてもスタッフを選んでしまうことになる。そういうことは極力避けたかった。あとは各自が経験をつんで案内できればいいんじゃないかと思いますね。
鈴木 案内をやっていると、こちらが教えるというより情報を聞き出すほうが多いくらいなんです。何をどう聞いたらいいか、うまく言えない人が多いので、こちらはまず問題をつかみ出してあげることが大切で、最近は話を聴くことに注力しています。それがうまくいって本が見つかると非常に喜ばれますね。
押田 こちらに来るようになって、本に関する情報の聞き出し方とか、どこにどんな情報があるかとか、基本的なところから教えてもらいました。難しいことはなかなかお答えできないんですけど、なんとか本を探すきっかけをつくれているのではないかと。
中村 わからないことがあるのは誰も同じなんですよ。僕も専門外のことはぜんぜんわからないし。そういう時にどのツールを使ったら最短距離で教えられるか。ネット上のツールはそれなりにあるし、パンフレットとか本といったアナログなものもいろいろあるので、この質問にはどのツールを使ったらいいかを考える。まあ知識そのものよりも案内するという経験が一番重要だと思いますね。
神原 あとは自分の目で確認するということですね。情報は本やネットからも収集できるんですが、自分の目で確認してお客さまに伝えるのとデータだけを見て伝えるのとでは伝わり方が違いますから。ですから時間があるときは30分ぐらい古書店を回って、教えてもらったことを自分の目で確認していますね。
中村 それはとても重要なことですね。コンシェルジュさんには、最初はとにかく街を歩いてもらいました。「今日の課題はこことここだから」って言って(笑)。でもそのほうがぜったい頭に入るんですよ。いま高岡さんが毎月第三土曜日に、神保町ツアーをやっているでしょ。あれは高岡さんにとってもすごくためになると思う。案内する以上自分でもその書店がどういう店か知っていないといけないわけだから。僕はいま外を回る時間がなかなかとれないんですが、街を歩いて自分の目で見ることはとても大切。僕も高岡さんのツアーに参加したいんだけど、嫌がられるかなと思って(笑)。
高岡 大歓迎ですよ(笑)。神保町というところは、一歩足を踏み入れればいろいろなことを知ることができる。家にいてテレビを見ている以上のことを知ることができるんです。
鈴木 千代田図書館でもこの間ツアーをやりましたよね?
押田 先日「コンシェルジュとめぐる神保町ツアー」を企画して、古書店連盟さんと一緒に回ったんですが、皆さんのご協力があって本当に満足度の高いツアーになりました。ツアー後のアンケートでもほぼ全員が「非常に満足」「ほぼ満足」にマルをつけてくれました。
鈴木 参加費をとっても参加したいという人がいるんじゃないのかな。
中村 ここでの活動の一番のメリットは、こういう横のつながりができてきたことですね。神保町を拠点に活動している団体はいろいろありますが、お互いに名前ぐらいは聞いているんですけど、どういう人が主宰していてどういうメンバーがいるのかわからなかった。案内所という拠点ができたことによって、お互いに顔が見えるつきあいができるようになった。それぞれの団体が目指す方向は違いますが、協力できるところは協力していこうという横のつながりができつつある。案内所を運営してきてよかったなと思うところですね。

案内所ができて変わったこと
古書検索用パソコンと大型タッチパネル
 
高山 神保町には180軒近い古書店がありますが、ここがオープンして1年経っているので、9割方の古書店が案内所の存在と役割をだいたい理解されていると思います。古書店の側から見て、何が一番変わったかというと、店にまったくジャンル違いの本を探しに来る人は激減しました。案内所がマスコミに取り上げられたからだと思いますが、それまでは青空古本市の本部が案内所のようなものだと思われていて、目録を買う人よりもこういう本はどこにあるのかといった質問のほうが多くて、案内所の必要性はつくづく感じていたんですね。ここ1年で神保町に来られる方の質問内容が変わってきたというのは実感としてあります。
中村 連想出版のウェブマガジン「風」にも書いたのですが、今年の古本まつりを見ていて、若い人がすごく増えた気がするんですね。去年はこんなに多くなかった。一時期、神保町というと中高年の街みたいな、第二の巣鴨みたいなそういうイメージが定着しつつあった。まず学生が相対的に減ってしまい、活字離れで若い人が本を読まなくなった。古書店の店主も高齢化して、そこに中高年が来るという。でも高山さんをはじめとして、古書店の若手がいろんなことをやり始め、若者向けの雑誌などでも神保町が紹介されるようになってきた。そういったことも影響しているんだと思いますが、平日の昼間は年配の方が多いんですけど、夕方になると若い人たちがグループあるいはカップルで来ますし、土日も多いですよね。
鈴木 多いですね。パソコンやタッチパネルに対して非常に反応がいいんですよ。すごく楽しんでいました。
中村 楽しみに来ていますよね。案内所がどれだけ寄与しているかは別として、それが神保町の最近の変化ですね。あとは外国人の観光客が増えているような気がします。ルイ・ヴィトンのガイドブックで田村書店さんが紹介されたり、海外からの注目度も少しずつ高まっているのかなと。あとはそういう人たちをどうつなぎとめるかですね。
高山 先日、共立女子大の美術史を専攻している学生を連れて、神保町を回ったんですが、古書店に入ったことがある人は12名中2人しかいなかった。それでまず案内所に来て、中村さんにいろいろ説明してもらったら、すごく新鮮だったみたいですね。古書店のことをぜんぜん知らなかったみたいで。そのあと美術史専攻の学生ということで、源喜堂書店とかボヘミアンズ・ギルドに連れて行って、本を探すとはこういうことだってレクチャーしたんです。そしたら「すごくいい場所を紹介してもらった。私たちは3年生だからあと一年半神保町を楽しめる」と感謝されました。掘り起こせばまだまだ神保町に魅力を感じてくれる人がいるということがわかりました。それはやはり若い世代かなと思うんです。
この間も古本屋の人たちと話していたんですが、たとえば「ナビブラ神保町」のような、いままでの神保町案内とはちょっと変わったサイトができたからといって、それまでの神保町ファンが離れるわけではない。むしろ新たなファンがつく。最初あのサイトに対して否定的な意見もあったんですよ。いままでの神保町ファンが引いちゃうんじゃないかと。でもそんなことはなくて、むしろいままでなかなか神保町に触れる機会がなかった人たちを取り込める仕掛けとなっていて、これからはそういうものが必要なんだなと感じました。
中村 僕らのつくっている「神保町へ行こう」というサイトは、このサイトを見た人が「あっ、面白そう」と思って神保町に足を運んでくれることを念頭に置いてつくっているんです。つまりこのサイトはいままで神保町にあまり来ていなかった新しい客層を引き込むときに、そのきっかけになってくれればいいというサイトなんです。2008年のグッドデザイン賞も受賞したんですが、「G」マークが入っていると、アートとかデザインに関心のある人たちの目に留まりやすいんですよね。だから一度神保町へ遊びに来てくれた人がもう一度サイト見たとき、なんか更新されているなと気づくぐらいがちょうどいいなと、一応半年ないし3ヵ月にいっぺん更新するようにしているんです。そういう新しい客層のキャッチが、だんだんとうまくいっている気がします。
鈴木 ここに来て「BOOK TOWNじんぼう」とか「ナビブラ神保町」などを見て、情報を確認している人、多いですよね。
中村 ここでしか見られない情報よりも、どこからでも同じ情報が見られるようにするというのがいいと思うんです。それはここでサイトを見た人が、家に帰ってもう一度サイトを開く。そういう人は神保町に関心があるのでもう一度ここに来てくれるんです。案内所というリアルな現場と「BOOK TOWNじんぼう」と「神保町へ行こう」が三位一体でうまく機能していってくれれば、連想出版としてはうれしいですね。それがコンセプトでありかつここまで関わっている理由ですね。なので長く続けていきたいという希望はあります。
それと最近ムック本(『神田神保町古書街2009』/毎日新聞社)を手がけたんですが、あえて巻頭に宇崎竜童さんのインタビューをもってきたんです。というのも、神保町特集というと決まりきった人が出てきてしまう。たまたま宇崎さんがジャズ祭をやるという話を聞いたので、これは面白いかもと思って話をもっていったら、快く受けてくれたんです。音楽とかジャズとかそういうものに興味がある人、お茶の水まで来ていた人が、そこからちょっと足を伸ばして神保町まで来てくれたらいいなと思って。また、これまで連想出版は古書店だけでやってきたんですが、応援隊さんが入ってくれたことで、飲食店や喫茶店などにも目を向けるようになった。別のところから古書店へ、古書店から別のところへと興味が広がっていく。目指していたものがこの1年で、少しずつかたちになってきたような気がします。

神保町に来たらまず案内所へ
ここ10年間で最高の人出と言われた第49回神田古本まつり
案内所も普段の倍の混みようだった
 
——古書店の多くが日曜日は休みだということは意外と知られていませんね。
鈴木 日曜日に店を開けるのは無理な話だと聞いているんですが、日曜日は案内所に平日の倍、300人ぐらいのお客さんが来るんですよ。その人たちが行く店がない。案内所としてはそれが非常に苦しいですね。遠方から初めて神保町に来た人が、8割方閉まっている古書街にがっかりして帰る、満足しないで帰るというのはどうなんでしょうか。
中村 いわゆる「神田時間」といわれるやつですね。だいたい18時か18時半には閉まってしまう。古書店が閉まってしまうと飲食店も閉まってしまう(笑)。でもだんだん夜中までやっている飲食店も増えてきたし、遅くまで開けている古本屋さんも出てきた。古本屋さんの気持ちを代弁するわけじゃないんですが、多くの古書店が家族経営で、日曜日も開けてくれというのは酷なんだろうなと思う。でも大きな古書店にはぜひ日曜日も開けてほしいですね。
僕は日曜に案内をするときは、「神保町へ行こう」のなかの「週末に楽しむ趣味の散歩道」を利用しています。案内所にはそのパンフレットも置いてあるので、営業している店はほんとうに限られているんですが、こういうところを回ってみてくださいと提案しています。
高山 先ほど女子大生を連れて神保町を回ったという話をしましたが、ツアー後の率直な感想のなかに「ラドリオとかミロンガには憧れてはいるんだけど、敷居が高くて入りにくい」というのが多かったんですよ。地元にいるとそういうこと感じないので驚きました。
神原 でも私も神保町へ来たとき、ドアが重厚なので入っていいのかなって……。
中村 いまの大学生ってマクドナルドとかスターバックス世代なので、お店の中が見えるのに慣れているんでしょうね。いわゆる喫茶店のような中がよく見えないところには入りづらい。だからちょっと紹介してあげるだけで、行くんですよ。僕は学生時代ぜんぜん入ってましたけどねぇ(笑)。いまはああいう喫茶店自体あまりないですからね。
高岡 最近だとオープンなカフェが多いから、抵抗があるのかもしれない。
高山 あの扉を押して、中に入るというのはちょっと勇気がいるのかも。
高岡 若い子だとまず「ぐるなび」で確認してからっていうところがあるから、得体の知れないところに入るという意識があるのかも。老舗だとホームページがないところも多いし……。
中村 古書店もそういう所あると思う。青山ブックセンターとか紀伊国屋書店とか三省堂もそうだと思うんですが、基本的に入口は明るいですよね。でも古書店って基本的に暗い。
高岡 暗いし入口で目が合うと恐いし(笑)。なんかちょっと入りにくい感じがしますよね。
高山 扉も重いですよね(笑)。よく自動ドアのお店のほうが入りやすいっていいますよ。
一同 (うなずく)(笑)。
押田 先日の古本まつりで、50代の人から「毎年来ているんだけど、やっぱり入りづらい。どうしたらお店の人から気軽に話しかけてもらえるんでしょうか。古書店さんに気に入られる方法はないか」と聞かれました(笑)。
高岡 高い買い物してください(笑)。
中村 あなたから話しかけてください(笑)。
高岡 古書店ってサービス業じゃないんですよね。その認識がここ最近あやふやになっているような気がする。
中村 ここに来るお客さんで古本の値段を見て、「何で古本なのに値段が高いの?」っていう人いるんですよ。これは完璧にリサイクル本屋と間違えているんです。新刊本屋と古本屋の間のマーケットをつかんだブックオフをイメージして来る人もけっこういる。
高岡 やはり土曜日になると、初めてに神保町へ来る方が多い。神保町はどんなところだろうって。その人たちの大半はブックオフ感覚で来るんですよ。それがいかに違うかということをわかってもらうためにはどうしたらいいか、それをここ最近考えています。そこを変えることができればいいなと。
高山 ものによってはブックオフなんかよりはるかに高く買いますけどね。最近は「買取とかってやっていますか」と聞く人も多い。そもそも古本屋の機能というものを初めて知ったという人も増えています。
中村 古本というものの認知度が下がっている気がしますね。リサイクル本屋と同じ感覚の人かと思えば、いま高山さんが言ったようにまったく何にも知らずに来る人もいる。まあそれはどうでもよくて、そういう人が全国から神保町へ来てくれたときに、案内所を利用してくれればいいなと。そのためにも案内所の知名度をもっともっと上げていきたいですね。



■「BOOK TOWNじんぼう」
神保町の古書店の紹介のほか、古書店50軒、新刊書店6軒の在庫が調べられる
http://jimbou.info/
■「神保町へ行こう」
神保町のポータルサイト。散歩紹介やマップ散歩道の紹介など、神保町の魅力を伝える
http://go-jimbou.info/
■「ナビブラ神保町」
神保町周辺のグルメ&便利情報が充実
http://www.navi-bura.com/



【本と街の案内所】
千代田区神田神保町1-7-7 11:00〜17:30 無休(年末年始をのぞく)
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