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KANDAルネッサンス 90号 (2009.12.25) 印刷用
表紙◆「神田日和」のこぼれ話16

天ぷら八ツ手屋店主 金安平八郎さん

いさかかつじ



「今日のお昼は何にする?」と悩みながら会社のまわりをうろつく。安くて、美味しくて、飽きがこない、そしてくつろげる店ってそうはない。ま、いいか、とりあえずおなかがふくれれば…。


味のある八ツ手屋の店構え
 
 司町にある天麩羅の「八ツ手屋」はこのお昼の大問題を解決? してくれると思う。お店はお昼の11:00〜2:00。夜はやってない。まさにお昼休みだけ。天丼(中)650円、(上)900円、天重箱1,200円、天ぷら定食1,500円、それぞれにお吸い物がついてくる。この安さ。ブラジルでとれた生エビを魚河岸から仕入れて、その日に使い切る。お米はあきた小町。江戸の味、ごま油を使っている。ブレンドしてあって、くどくなく飽きがこない。お新香は自家製。キャベツを一か月塩漬けしたもの。少しすっぱい。近ごろのスーパーで売ってるのは甘くていけない。お新香といえばこの味だ。口がさっぱりする。

 この界隈には小さい会社が多いのでここのお弁当がとても重宝されている。そりゃそうだ、安く美味しくあったかい天丼がオフイスで食べられるんだから…。

 お店の近くにビルに囲まれた小ぶりの神田児童公園がある。女性社員がお手製のお弁当をひとりで普通に食べている(この風景ではOLなんて言いたくない)。会社員がはやりのパズル、ナンバープレースをやっていたり、文庫本を読んでいたり、伸びをしたり、営業マンたちが外回りの途中で一服していたり、お母さんたちがすぐ前にある小学校へお迎えで立ち話しながら待っていたり、ブランコやスベリ台でこどもたちが遊んでいたり、ドロップアウトしたようなおじさんがおじさんが日なたぼっこしていたりする。お互いを気にすることなくくつろいでいる。この公園いいなー。


 美味しそうに食べてる「八ツ手屋」のお客の顔をながめていたら、あの児童公園のくつろいだ雰囲気と似てるような気がしてきた。お店がそうさせるのか、町が持ってる空気なのか分からないけど……。お客の数が少なくなったころを見計らって、たまに公園の鳩が歩いて入ってきて、床に落ちているご飯粒をついばんでいる。お店の人は飛ばないように穏やかに出そうとする。お客は食べながらニコニコ見てる。いいなー。


天ぷらを揚げる金安さん
 創業1914(大正3年)。屋号は祖父、祖母、父、母と手が8つあったので「八ツ手屋」とつけられた。司町のこの場所でずーっと天ぷら屋を続けている。ご主人の金安平八郎さんは昭和9年生まれの四代目。天ぷらを揚げてかれこれ50年。「天ぷらは油の温度が命、長年の経験でわかる…」とか。通りから金安さんの揚げてる姿が窓ガラス越しに見られる。

「以前は、この辺りも人がたくさん住んでいて、近くの一八稲荷の縁日には前の通りにお店がいっぱい出てとても賑やかだった。町の中でほとんどの買い物が済んだ。今はみんなばらばらになってしまったので町が不便になってるのかもしれない。でも夜中に救急車が来たりすると、こんだけの人が何処にいたのってぐらい表に出てくる。地元の人がいないわけではないんだ。
 昔この辺りに住んでいた人たちが、うちに来て情報交換をしていく。週に一度ぐらいは淡路町の江戸遊(スパ)に行く。内風呂があるんだけど朝湯が気持ちいいんでね。町の人たちともそこで顏を合わすんで、そこも情報交換の場になっているんだ」と金安さん。町だ…。




天ぷら 八ツ手屋
東京都千代田区神田司町2-16
TEL.03-3256-6630
いさかかつじ・町と人を訪ねるイラストレーター
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