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神田資料室

KANDAルネッサンス 86号 (2008.06.25) P.2〜3 印刷用
特集 神田で知る、インド
 神田の街を歩いていて、ふと思った。「最近、インド料理店が増えた気がする……」
 インド人スタッフもいる宝田無線電機株式会社の石原直幸さんのお話によると、秋葉原を訪れるインド人の数もここ数年で増えているという。
 私たち日本人がインドと聞いて思い浮かべるものは何だろう。カレー? 歌と踊りの娯楽映画? インド式計算?
 私たちにとってまだまだ未知の国、インドを知るためのきっかけを、神田でも見つけられるかもしれない。そんな思いから、神田を拠点に日印をつなぐビジネスをしている人や、食をはじめとしたインドの文化に触れられるスポットを訪ねた。

その1 日本とインドをつなぐ人

株式会社インド・ビジネス・センター
代表取締役社長・島田卓(たかし)さん
http://www.ibcjpn.com/

「インドの魅力はやっぱり『人』ですね」

世界の中心になりつつあるインド
 駿河台にオフィスを構える株式会社インド・ビジネス・センターのミッションは、日本企業がインドでスムーズにビジネスを行うための、フルサポート。インドに関する情報収集、インド進出に必要な申請の代行、現地でのリクルートなど、業務内容は多岐にわたる。またウェブサイト「インドチャネル(http://www.indochannel.jp/)」で経済・文化・旅行などの最新情報を発信するほか、有料メルマガ「ビジネスプレミアム」では、インドの新聞約20紙から毎日重要記事をピックアップし、日本語に抄訳して発信している。
 日印をつなぐビジネスを始めたのは「もののはずみ」と島田さんは笑う。銀行員時代、インド・ニューデリー支店次長として約4年間のインド生活を経験。その後アジア・オセアニア部次長を経て勤続24年を迎えたとき、「死ぬまでに一度、自分の力で何かやってみたい」と思ったという。そのときたまたま自分の経験のなかに、インドという材料があった。
 「これからはインドに行く人が増えるんじゃないか。そのときに誰かサポートする人がいてもいい」。そんな気持ちから、97年に同社を設立した。
 現在インドから日本への留学生は500人に満たない。また日本からインドへ進出している企業も500社程度と、日印の交流はまだまだ少ない。しかしインド人ITエンジニアの海外での活躍はよく知られるところだし、インドの面積や潜在的能力を考えると、これからますますインドは世界で重要な位置を占めてくると島田さんは言う。

インドビジネスに「以心伝心」はない
 インドとビジネスをするうえで、お互いの気質の違いを理解することは重要だ。
 「インド人は徹底的に議論を交わし、そのうえでベストチョイスを探す。日本でいう『以心伝心』はありません」
 しかし、インド人には相手の考えが理解さえできれば、受け入れる柔軟性があるという。
 「インドは人種のるつぼ。言葉、考え方、宗教の違いを全部受け入れていかなければならない。それだけに柔軟性もあるんですよ」
 島田さんにとって、インドの魅力は「人」にあるという。
 「トップクラスのインド人は能力も高いし、英語も母国語のように話す。こういう人たちがいるから、将来インドは相当なものになるだろうなと」
 現在の小中学生が30歳前後になる頃、労働人口は日本人1人に対してインド人16人という推計があるそうだ。つまり、日本人1人が16倍働かないと、インドと同じ経済効果を上げられないということだ。
 「しかし日本には技術や科学など先行しているものがたくさんある。それをうまく協働して伸ばしていく仕組みができれば、勝ち負けの世界ではなくなりますよね。こういうことを学校で教えてあげたら、子どもたちにもっと『考える力』がつくと思うんだけど」

インドは人生の複雑さや深さを見せてくれる
 島田さんいわく、「日印の協力関係を発展させるときネックとなるもののひとつに、日本人の視野の狭さがある」。日本では異文化交流の機会が少なく、異文化と出合ったときに落ち着いて折り合いをつけていく訓練が積めないためだ。
 「日本の中だけにいると『こうあるべき』という狭い視野で物事を見てしまいがちですが、インドに行くと、『何でもあり』ってことがわかります。立派な病院の向かいにスラム街がある。そういう世界もあるんです。よくインドに『はまった』という話を聞きますが、それは単に人生の複雑さや深さを知り、自分の視野を広げてもらっただけ。若い頃そういう経験をしておくと、いろんなケースで偏見を持たずにいられる。だからこそ、若いうちにインドを旅するのはおすすめです。『苦労は買ってでもしろ』っていうじゃないですか」
 
◆島田さんの最新本
『日本を救うインド人』講談社+α新書、定価 本体838円+税




株式会社西インド会社
代表取締役・外ノ池祐太さん
http://www.westindia-group.com/

「日本人がもっているインドのイメージは、ほんの一部」

「エスニック料理の街」の火付け役
 株式会社西インド会社は、神田神保町を拠点に、インドを中心としたアジア文化やスパイスの魅力を伝える事業を行っている。
 そもそもの始まりは60年代後半。ビートルズのインド滞在をきっかけにインドブームがおきるなか、当時学生だった創業者の外ノ池愉平(ゆうへい)さんは、初めてインドに旅をした。そしてそのときの経験を生かし、73年に株式会社西遊企画(現・西遊旅行)を設立。欧米への旅行が主流だった当時画期的な、インドやアフガニスタンなどシルクロード方面への旅の企画、販売を開始した。
 20年ほど前まで東京には数えるほどしかインド料理店がなく、インド帰りのお客さんからは「日本でも美味しいインド料理が食べたい」という声が度々上がっていた。それならつくってしまおうと神田神保町のさくら通りに開店したのが、「インドレストラン マンダラ」。旅行会社という性格上、現地のトレンドチェックやスタッフの確保が比較的容易にできたことも大きかった。
 その後、インドだけでなく世界の食文化を日本に伝えていこうと、90年に株式会社西インド会社を設立。さくら通り沿いにタイレストラン「メナムのほとり」「ムアンタイなべ」、ブラジルレストラン「ムイト・ボン」を次次に開店。エスニック料理の街、神保町の火付け役となった。
 「外国のものや文化の香りのするものに対してオープンな、神保町の土地柄もよかった」と外ノ池さんは言う。
 マンダラでは季節ごとに内装を変えたり、食器に信楽焼きを使ったりと、日本人が馴染みやすい店づくりをしている。一方料理は本場の味を追及。カレーには18種のスパイスを使用し、味にズレが出ないよう、定期的にインドから人を呼びチェックしてもらうという。また炭火を使ったタンドール(土窯)で焼くナンはふっくらとしていて、ファンも多い。今では神田のインド料理店のさきがけとして、存在感を放つ店になった。

アジアの手仕事の魅力を伝えたい 
 飲食店のほかに、アジアならではの伝統工芸の素晴らしさを伝えようと同社が運営しているのが、靖国通り沿いの「アジアンギャラリー 季節風」だ。もともと外ノ池さんの母親の禮子(のりこ)さんがインドやタイを訪れた際、アンティークの布を少しずつ買い集めていたのがきっかけ。カンタ刺繍*のショールやヤンリーパオ*のバッグなど、インドをはじめとしたアジア各国の工芸品がそろう。店で扱う商品はすべてスタッフが現地で直接触れ、デザインや品質に納得したもの。一つ一つが美しく味があり、上質なアジア雑貨の魅力を感じることができる。

鍵は日本がどれだけオープンになれるか
 外ノ池さんが初めてインドを訪れたのが10歳のとき。それから約20年が経ち、ショッピングセンターができたり車が増えたりと、インドの街並みはずいぶんと変化した。しかし変わらぬこともたくさんある。外ノ池さんが感心するのは、客人を招いて大勢で食事をする習慣や、家族のつながりが強いこと。また、様々なレベルで多様性があることだという。
 「日本人が持っているインドのイメージはほんの一部。宗教、言語、食習慣など、あらゆるものが共存しているのが魅力です。日本では外国人に対してステレオタイプな見方をすることが多いけど、いろんな人がいるのはどの国でも同じこと。同じ人間であることには変わりないですよね」
 今後はインドと日本を行き来する人たちに、生活に根ざしたトータルなお手伝いをしていきたいという。そのひとつとして、江東区に「ナマステフーズ」を開店。インド人の食生活に欠かせない食材・スパイス等を扱っている。
 「これからは、日本人がインドに対してどれだけオープンになれるかが鍵。また、インドの人が日本に来やすいような制度的サポートも必要ですね。そうすれば、日印の協力が生む可能性はどんどん広がっていくと思います」

*カンタ刺繍……インドの西ベンガル州とバングラデシュで見られる手工芸
*ヤンリーパオ……タイ南部特産のツル性植物



◆インドレストランマンダラ
千代田区神田神保町2-17 集英社共同ビルB1F
tel.03-3265-0498
営業時間11:30〜15:00、17:00〜23:00(土曜は22:00)、日祝休

◆Asian Gallery 季節風
千代田区神田神保町2-5
tel.03-3222-3114
営業時間11:00〜19:00、日祝休

◆株式会社西遊旅行
千代田区神田神保町2-3-1 岩波書店アネックスビル5F
tel.03-3237-1391
営業時間 9:30〜18:30、土日祝休

◆ナマステフーズ
江東区大島9-3-12 東大島メトロード18No.9
tel.03-5836-6638
営業時間 11:00〜21:00、不定休

■参考文献
島田卓『2時間でわかる図解インドのしくみ』中経出版、2001
島田卓『日本を救うインド人』講談社+α新書、2008
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