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KANDAルネッサンス 84号 (2008.01.25) P.5 印刷用
特集 春を寿ぐ和の世界

◇KASACHO(カサチョウ)

「原点である手書き文字を守っていきたい」

「手書き扇子 字凧展」会場にて
 手書き扇子や字凧の味わいは墨のツヤやかすれなどの表情にあるという。「KASACHO」の手書き扇子は、白扇に直接丸尽くし文字を書き込んだ独特のもので、写真ではわかりづらいが、手にとってみると、人の手のぬくもりが感じられる一品だ。
「KASACHO」は嘉永5年(1852)創業の傘長の伝統を受け継ぎ、3年ほど前から手書き扇子をインターネットで販売している。運営しているのは前川浩さん・佐与子さん夫妻である。
 何を隠そう浩さんの父上は、神田多町で提灯等に粋な江戸文字を書き入れていた傘長の四代目、前川巳代三さん。
「神田の職人というと、いわゆる江戸っ子みたいなイメージがあるかもしれませんが、うちの親父に関していえば、お客さんに満足してもらいたい一心で日々努力していたという印象があります」
 現在店舗設計に携わる浩さんは、自身のなかではまったく別の仕事に就いたとは思っていないと話す。ものづくりという点では同じではないかと。お二人が傘長の仕事を引き継いでいこうと思ったのは、引越しで傘長の荷物を整理していたとき。いろいろな品を見ているうちに、デザインやセンスに惹かれるものがあり、今の時代にも十分生かせるのではないかと思った。同時に傘長の伝統も大切にしていかなければと強く感じたという。
 佐与子さんは浩さんと設計の仕事をしていたが、引越しを機に四代目と話をする時間が増え、いつしか文字の面白さに引き込まれていった。そして思うところがあり、真剣に文字を書き始めた。ある時書いたものを四代目に見せると、「面白いね」といって喜んでくれた。佐与子さんは次第に文字を書くことが面白くなっていったという。
「見よう見まねといいますか、四代目が書いているところを見たり、実際書き上がったものを見て、こういうふうに書いたのかなと想像したり。四代目からはいいか悪いか、面白いか面白くないかを教わりました」

佐与子さんの好きな文字は「いらっしゃいませ」
「千客萬来」「福寿」
幸福を願う文字はどこか華があり賑わい感がある
 一口に江戸文字といっても、書き手によって全体のバランスやディテールが微妙に違ってくる。同じように見えるが、やはり書く人の個性が滲み出るという。文字を書くのに重要なのは筆の流れだ。お二人によると、三代目の書いたものには動きと勢いが、四代目の書いたものはどっしりとした安定感があるという。
 佐与子さんは、最近になってまねではなく自分でかっこいいと思える文字が書けるようになってきたと話す。しかし、自分らしさを出せるようになるためにはまだまだ修行が必要だとも。では目指すのはどんな文字なのだろう。
「動きがあって安定感のある文字。矛盾しているようですが、両方の要素が含まれている新しい文字をいつか書けたらと思っています」

 今回の個展では字凧を復活させた。その理由を佐与子さんはこう語る。
「四代目が書いていた字凧はとてもデザイン性の高いものです。お祝いの品として人気のあった字凧も残念ながら今では手に入れることができません。それならもう一度作ってみようかと」
 帳場格子を使った会場ディスプレイは浩さんによるもの。この帳場格子は実際多町の店で使っていたもので、当時の雰囲気を生かしつつ、華やかに仕上げた。
 売れ筋の商品は、長寿祝や出産祝、結婚祝などハレの日に彩りを添えるもの。名入れのオーダーが多い。「KASACHO」では、贈られたあと家や店でそのまま飾って楽しんでもらえるように、商品を額装したものを提案している。
「需要がなければものを作るという行為自体残っていかないと思うんです。今の暮らしにあったものを提案していくことが、傘長の伝統を守っていくことにつながっていくのでないか」と浩さん。
 まず商品を見てもらうこと、そのためにも個展は毎年続けていきたいと語る。将来的には店をもちたいそうだ。佐与子さんが文字を書き、浩さんが商品化して宣伝活動を行う。傘長の伝統は二人三脚で受け継がれていくのだろう。

KASACHO(カサチョウ)
http://www.kasacho.com
tel.03-3494-8803
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