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神田資料室

KANDAルネッサンス 80号 (2007.01.25) P.2〜5 印刷用
特集

「神田で事始め」

新しい年を迎えて、何か始めてみたい、新しいことに挑戦してみたいという人は多い。
そこで今回は、千代田区で始められる伝統芸能や人気のお稽古ごとを取り上げ、その魅力にせまってみた。


■和太鼓


全身を使って叩く爽快感


 伝統行事や儀式、お祭りに欠かせない和太鼓。神田明神でも神田祭をはじめとして、様々なシーンで和太鼓が演奏されている。和太鼓は気軽に叩くことができ、誰でも音を出せるところが魅力。単純な楽器であるにもかかわらず、迫力あふれる演奏は聴く人に感動を与える。実際、神田祭で和太鼓の演奏を聴いて、将門太鼓を習い始めたという人も少なくない。
 神田明神将門太鼓は、神田明神の三宮として祀られている平将門公の生涯を組曲に構成したもので、33年の歴史がある。大小の和太鼓と鳴り物と呼ばれる竹や拍子木などを組み合わせて演奏する将門太鼓は、江戸っ子らしい歯切れのよさと軽快なリズム、躍動感あふれる動きが特徴だ。
在籍者は現在30名ほどで、10代〜30代の女性が多い。指導しているのは将門太鼓創設時からのメンバーである中牧由美さん。「最初はバチの持ち方と構えから入ります。太鼓の面白いところは、演奏者が変われば音も動きもまったく違ったものになるところ。徐々にその人の持ち味が出てくればいいと思う。大事なことは気持ちをつなげることです。技術はあとからついてくる」
 取材した日、桶胴太鼓に挑戦していたのは女子中学生の二人。二人は小学校のクラブ活動で和太鼓を叩いたことがきっかけで、将門太鼓を始めた。また、建築を学んでいるという大学院生は、「もともとお祭りが好き。大人になるにつれて、日本人として何か伝統芸能を学びたいという気持ちが強くなった」と言う。そして皆「太鼓は難しいけど、全身を使って叩いていると楽しいし、爽快感がある」と口をそろえる。受験や就職などで中断することがあっても、また始めたくなる理由はこのへんにあるようだ。
 小学6年生までを対象とした神田明神稚児太鼓との合同演奏もあり、一年を通して将門太鼓に触れる機会は多い。今年は神田祭の本祭りの年。まずは和太鼓の演奏を生で聴いてみよう。きっとそのリズムと響きに魅了されるに違いない。

神田明神将門太鼓・稚児太鼓
千代田区神田駿河台2-1-19-416
(代表:米山穂積)
tel. & fax.03-3295-5890
練習場所:神田明神神輿庫(千代田区外神田2-16-2 神田明神境内)
日時:日曜日10:30〜12:00(稚児太鼓)、11:30〜14:00(将門太鼓)、
会費:3,500円/月(将門太鼓)、3,000円/月(稚児太鼓)バチ等は実費
 

■豆盆栽


自然がお手本
手のひらサイズの四季を楽しむ


 一昔前はお年寄りの趣味と言われた盆栽だが、ここ数年、若者や女性の間にもすっかり定着した。手のひらに乗るサイズの豆盆栽は特に人気がある。豆盆栽は小品盆栽、ミニ盆栽とも呼ばれ、初心者にも扱いやすい。
 九段社会教育会館では月に一度、豆盆栽教室が開かれている。教えているのは小品盆栽研究家の迫敬輔さん。
「盆栽は庭の日当たりのよいところに棚をつくり、そこで育てるのが理想。でも現実的には難しい。豆盆栽だったら一畳分で百鉢は置けますから、都会に住む人にはぴったりですよ」
 実は盆栽の評価というものは百年、二百年単位なのだそう。「でも豆盆栽なら5、6年たてば見られるようになるし、種から育てたものでも3年もすれば見られるようになります。気軽に楽しんでもらいたい」
 ところで盆栽と鉢植えの違いって? 「たとえば松をそのまま育てても鉢物でしかありませんが、盆栽は自然がお手本。人の手を加えてなお自然に見えることが重要なんです。ですからまず自然の樹を観察してほしい」。ただ街路樹や庭木は参考にならないという。あれは樹の本来の姿ではないからだ。
 初心者が豆盆栽を育てるときのポイントは、大事にしすぎないこと。特に冬場は鉢が凍ってしまわないかぎり、軒下で十分育てられるという。鉢を部屋に入れたり、外に出したりしていると、温度差に樹が戸惑ってしまうそうだ。
真剣な表情で針金をかける
愛らしい豆盆栽の数々
 取材した日の作業は「曲づけ」。幹に針金をかけて人工的に曲がりをつけるのだ。環境に合わせて生きようとする樹の性質を生かした作業で、一年ぐらいそのままにしておくと、幹に曲がりができる。何年もかけて自分がイメージする樹形に仕上げていくのが盆栽の醍醐味でもある。
 教室は様々な年齢の人が集っており、始終なごやかな雰囲気。この教室に通って半年という女性は「最初は苔玉に興味があったけど、実際やってみたら盆栽のほうが面白いし、奥が深い。手をかけて育てていくのが楽しい」という。また、70代の男性は「月に一度集まって皆さんと樹をいじるのが楽しい。自分で育てたものが、小さいなりに花が咲いたり、実がなったりすればなお楽しい」と話す。
 迫さんに手伝ってもらって曲づけした小さな真柏が、一年後どのように育っているか、今から楽しみだ。
 
神田豆盆栽会(代表:迫敬輔)
tel.03-3368-0943
場所:九段社会教育会館(千代田区九段南1-5-10)
日時:毎月第3金曜日18:00〜20:00
会費:会場費500円、材料費500円〜2,000円


■古文書を読む


歴史の躍動が感じ取れる
くずし字の魅力

 神保町に「古文書塾てらこや」が開講したのは2003年。丸3年を経た現在、受講者は200名ほどになるという。この講座には、初めて古文書を学ぶ人のための「入門コース」、様々なテーマで古文書を読む「本科コース」、文献の内容だけを知りたい人のための「特別講座」、そのほか「通信講座」がある。「たくさんのテーマの中から好きなものを選べることが、この講座の特徴です」と、立ち上げ当時からてらこやに携わる、(株)小学館プロダクションの大谷亮さんは話す。
 古文書の定義は、学術的にいえば「手紙など、特定の対象へ意思を伝達するために作成された文書」のこと。しかしてらこやでは江戸時代以前の文献全体を対象にし、黄表紙や公文書、一般人の日記など、様々な文書を教材にしている。本科コースのテーマも「古文書にみる江戸のくらし」「古文書が語る白木屋の商いと暮らし」など7講座があり、バラエティ豊かだ。
 受講者は50〜60代の男性が中心だが、下は19歳、上は80代の人もいるという。「最近は女性の受講者も増えてきました。旅行で訪れた名所や記念館でくずし字に遭遇し、『これが読めたらもっと楽しいだろう』という気持ちで気軽に始める人が多いですね」と大谷さんは言う。
「武家文書に読む“武士の仕事と生き方”」の講師、岩崎信夫さんは、「教材の選び方が講師にとって一番難しい」と言う。「内容があり、自分が面白いと思うもので資料が手に入るものを使います。神保町の古書街でもよく探しますよ。今回の教材はたまたま神田の古本市で手に入れた本を読み進めるうちに、松平家の家臣達が主君の言行を記したものがあることがわかり、更に調べるとその資料が愛知県豊橋市にあることがわかったので、豊橋の中央図書館まで行って写しを手に入れました」。神保町という立地について岩崎先生は、「文字に関心のある人がたくさんいますからね。他の土地だったら、古文書だけでこれだけの人が集まらないと思いますよ」という。
 古文書の魅力は、見たり触ったりするだけで、まさにその時代が手に取れることだという。「読み解いていくと、概説にはない具体的な話が出てくる。それは当時本当に起こったことであり、少なくとも当時の人の頭の中にはあったこと。それを知り、自分なりにその時代を組み立てられるのが、魅力だと思います」と岩崎先生。
 ここ10年ほどで一般人の手紙や日記などが安価に出回るようになり、より身近になりつつあるという古文書。この機会に、気軽な気持ちで始めてみては。

小学館アカデミー 古文書塾てらこや
千代田区神田神保町2-14 SP神保町ビル 
tel.0120‐072‐465(10:00〜20:00 土日祝除く)
【入門コース・本科コース料金】
入会金:10,500円(税込)、受講料:6ヶ月分全11回講座 34,650円(税込)
※千代田区「講座講習会バウチャー制度」対象講座につき、千代田区民の方には割引制度あり
古文書てらこやのホームページ


■謡・仕舞


大きな声を出してストレス発散
お稽古で増す能の深い味わい


 能の鑑賞だけでは飽き足らず、自分でもお稽古をしてみたいという人は多い。しかし、いきなり能を習いたいといっても無理な話。能を習うとは、能の大もととなる謡や仕舞などの骨組みを習うことである。江戸時代、謡は武家や商家の人々の教養を高める習いごとであった。
「謡は、古今和歌集や平家物語といった日本の古典から歌を引いてつくられていますから、知っている文言がたくさん出てきます。読むだけでも楽しい。またお腹から声を出すので健康にもいいし、ストレス解消にもなる」と話すのは、謡本や能楽関連書を手がける檜書店の檜常正さん。
謡や仕舞を習うには、能楽師の先生について個人指導を受けるか、カルチャー教室などで講座を受講する方法がある。檜書店では、初心者を対象とした謡と仕舞の教室「能を身近に感じる会」の窓口も兼ねており、同書店の案内チラシ見て、教室の存在を知ったという人も多い。
 この教室では能楽師を講師に招いて団体稽古を行っている。4名の能楽師が交替で指導。個人で習うには敷居が高いという人も気軽に始めやすい。
仕舞のお稽古。
構えやすり足ができるようになるには何年もかかる
 教室に来ているのは、学生時代に謡を習っていて、定年になって稽古を再開したという人が多い。若い女性の姿もちらほら。習い始めたきっかけや魅力について聞くと、「能はよく観に行っていましたが、いまひとつわからなくて。友達から謡のことを聞いてやってみようかと。何といっても先生のすばらしい声を間近で聴けることが魅力。今年の発表会は着物を着る予定です」(30代女性)、「お仕舞の型にもひとつひとつ意味があり、それがわかると舞台を観ていても楽しい」(20代女性)。
 取材した日は年に一度行われる発表会に向けて、観世流能楽師の藤波重彦さんが稽古をつけていた。発表会は世田谷にある教室と合同で行う。日ごろの成果を発表する機会。稽古にも熱が入る。発表会で舞台に立つことが病みつきになる人もいるのだそう。
 能を観ることも勉強になる。「装束と面をつけ、お囃子が入った実際の能とお稽古でやっていることは直接結びつきにくい。ですからなるべくたくさんの能の舞台を観てほしいですね」と藤波先生。身近なところでは、神田祭で行われる薪能がおすすめだ。初めて能を観る人でも入りやすい。
 能は観るだけでなく、謡や仕舞を習うことで、より味わいが増していく。お稽古を見学してそう感じた。

「能」を身近に感じる会事務局
千代田区神田小川町2-1檜書店内(担当:小林)tel.03-3291-2488
場所:九段社会教育会館(千代田区九段南1-5-10)
日時:月2回第2・第4木曜日18:30〜20:00
月謝:6,000円 *謡本、扇、足袋は実費
ホームページはこちら



■フラ


MOANAで体験フラ


フラとは、ハワイの伝統的な音楽と踊りのこと。その起源には諸説あるが、古代ハワイのポリネシア系先住民の間で、神々や自然を崇敬する宗教儀式の一環として踊られていたという。「フラ」というハワイ語には「踊り」という意味も含まれるので、日本でいう「フラダンス」は間違い。近年はフラという名称が一般的になりつつある。
 現在日本のフラ人口は50万人といわれるが、昨年福島県いわき市の「常磐ハワイアンセンター」(現スパリゾートハワイアンズ)誕生を描いた映画「フラガール」が公開されたこともあり、ますます習う人が増えている。その魅力に触れるため、千代田区三番町の「モアナハワイアンクラブ」を訪ねた。
***

「フラを始めたのは、ハワイも踊ることも大好きだったから」という山岡清美さんも、「ハワイのこともフラのことも全く知らなかった」という牛丸淑子さんも、ここに通って10年になる。「二人がこれだけ続いてるのは、楽しいからよ」と話すのはモアナ小林先生。フラでは、足でステップを踏み、手の動きで曲のストーリーを表現する。特に基本となるのは、20種類以上あるというステップ。初心者には、ベテランの生徒さんがマンツーマンで教えてくれる。「レッスンでは、歌詞の意味も丁寧に教えます。ハワイアンの音楽は、美しい物語や風景を描いたものばかり。曲を理解すれば、自然とスマイルが出てきますよ」。
 踊ることで、自然の美しさやハワイアンスピリットに触れられる。その奥の深さが、フラの魅力のひとつかもしれない。

モアナハワイアンクラブ
千代田区三番町3-2 三番町コンド502
tel.03‐3222‐1681
入会金:10,000円
レッスン代:月2回7,000円、月3回10,000円、月4回12,000円


■当世落語指南

文 湯川恵子

 
 落語の話し方のお作法がビジネスパーソンの間で静かな着目を浴びていることをご存知だろうか。大手町界隈でも落語家を講師に迎え、アフター5に笑いのセンスで会話力を磨く講座が開かれていたり。無縁の世界と思われがちな落語が、ビジネスでも使えるテクニック満載と知れば構えることはないはず。まず手始めに、巧みな話術で多くの人の心をつかむ落語の話し方からビジネスシーンで使えるテクニックを探ってみよう。
 落語家は高座にあがって本題に入る前の数分間、その時々で話題になっていることを話しながら、観客の反応を見て演目をその場で決めることもあるそうだ。この前置きの部分を「枕」という。ビジネスパーソンがプレゼンや初対面の相手と話すときも同じ。相手の関心事を冒頭で盛り込んで共通の話題を探っておくと、相手との距離も近づき、仕事の話もしやすくなることは経験的にご存知の方も多いはず。
 本題に入ってからでも相手の反応を見て、自分の話に興味をもっているようなら予定外のことも話し、逆につまらなそうなら必要最低限に情報を「編集」するスキルも落語に学ぶことができる。ここは重要、という部分の前で一瞬黙る「間の使い方」も効果的。相手が「えっ」と思ったところで、それまでよりも少し大きな声で会話を続けるとメリハリがつく。しかし間の使い方もその後に伝えたいことが「えーっと」ではもちろん台無し、間のあとは最も言いたいことを端的に述べると効果的。
***
 
 通勤時間を利用して、携帯音楽プレーヤーで落語を聴くだけでもそのテクニックを学ぶことができるとか。そこで落語を携帯して外出するためにもぜひ「贔屓(ひいき)」をつくりたい。贔屓をつくる秘訣は、自分の年齢プラスマイナス10歳の範囲内で落語家を探すこと。同世代の落語家なら笑える勘所も一致しやすいとか。贔屓を突破口に、その師弟や兄弟弟子へと次第に好きな落語家を広げていくという手もあります。落語の世界では前座、二つ目、そして真打へと昇進するしくみをもっているが、必ずしも真打が良いというのではなく、若手落語家が上達する過程を追っかけるのも落語の醍醐味。i-Tunes Storeから提供されるニフ亭・ぽっどきゃすてぃんぐ落語」は無料で、今注目の若手落語家の古典落語を月替わりで楽しむことができる。また落語協会では、インターネット落語会で寄席の模様をネット上から届けてくれる(もちろんタダ)。
 とはいえやはりいずれは寄席に足を運びたい。落語をライブで見られる場所は大きく分けて3種類。昔ながらの寄席、ホール落語、地域寄席。寄席は現在、東京には5ヵ所ある。「上野鈴本演芸場」「浅草演芸ホール」「新宿末広亭」「池袋演芸場」「国立演芸場」。かつては神田にも連雀町の「白梅亭」、それから新石町の「立花亭」がありました。特に立花亭はずっとのちまで、今でいう須田町交差点、万惣の隣にあり、人気者・古今亭志ん生師匠もよく高座に上がっていたそうだが、残念ながら現在は2つともなくなってしまった。
 ホール落語とは、市民会館や各地のホール等で行われる落語で、独演会や二人会など少数の落語家が出演することが多い。地域寄席は神社やお寺の本堂、蕎麦屋の2階、公民館など小規模な会場で行われる落語会を指す。神田界隈でも、桂藤兵衛師匠の古典落語の会が開催されている。もちろん寄席や落語会の情報を仕入れるには、ネットがカンタン便利。
 人間関係をスムースにして、仕事で成果をあげる近道に。勉強と寄席に休みなし——毎日聴けばあなたも人付き合いの名人上手になれる……かも。

■噺家 桂藤兵衛さんに聞く


今の時代こそ、落語を


 「神田は古典芸能のメッカ。昔は寄席も多かった。神田が舞台になっている噺が多いのがなによりの証拠」と話す藤兵衛さん。1987(昭和62)年に古典落語を聴く会「藤兵衛会」をスタートさせ、神田に拠点をおいてかれこれ20年以上になる。おかげで馴染みの神田っ子も多く、古老から江戸訛りや言葉遣いを教わったことも。
 藤兵衛さんは中学のころ噺家を志し、高校卒業とともに迷わず八代目林家正蔵に入門。何か通じるものを感じたという師匠のもとで研鑚をつみ、今は古典落語にこだわった活動が中心だ。自身も地元民であるため地域へ寄せる思いは強い。だから神田で寄席を実現させたいと地道な努力を重ねている。
 落語を含め、今の芸能は単純ですぐに笑えるものが優先されがちだが、本来の江戸の笑いはもっと上質で奥ゆかしいもの。四百年以上の歴史もさることながら、もとはお坊さんの説法から派生したともいわれる。落語の歴史は古いのだ。
「落語は伝承芸です。芸の部分をおろそかにしてはならない」と現状を危惧する。もちろんそれは聴き手にもいえることで、安易に笑いを求めてしまってはいないだろうか。芸は、知性や教養を土台に磨きあげるもの。しかも一朝一夕には会得できるものではない。「だから今こそ、話芸という伝承芸にきちんと取り組まなくてはならない」。こう語る藤兵衛さんは、あくまで古典に徹した「伝承話芸を聴く会」を2005年からスタートさせた。
 だからといって、落語を堅苦しいものだと思わないでもらいたい。一度でも寄席に足を運んだことのある方はお分かりだろうが、お気に入りの噺に出会えるのも楽しみの一つ。「落語はちゃぶ台と座布団さえあればいい。いつの間にか聴き手を創造の世界へ誘ってしまう。そこが魅力だね」と藤兵衛さん。
情報の氾濫した現代は、苦労せずに欲求を満たすことができる世の中になってしまった。だからこそ、落語を聴いて頭の中をリセットしてもらいたいという。「結局、噺の中身は髷結っている人間が出てくるわりに、今を語っているものが多い。そこがいいんじゃないかな」
 かつて、神田川沿いにある柳森神社には組立て式の高座があり、人間国宝の小さん師匠などがその話芸を披露していたという。そう、神田には気軽に笑い集う場があった。それがまた粋だった。だから、神田にぜひとも寄席を開きたいと藤兵衛さんの意気込みは強い。藤兵衛さんの落語を聴いて、つかの間の粋な浮世へタイムスリップしてみてはどうだろう。

■かつら・とうべえ
1952(昭和27)年文京区出身。
69年八代目林家正蔵(のち林家彦六に改名)に入門、林家上蔵を名乗る。
84年真打昇進。三代目桂藤兵衛を襲名。
(社)落語協会所属。風流演芸アカデミー主宰。お問合せtel.03-3237-8748



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