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KANDAルネッサンス 79号 (2006.10.25) P.7 印刷用
当世古本屋事情 その3

神保町の古書即売展

西秋 学

 本の街・神田神保町に「東京古書会館」という建物があることをご存知だろうか。駿河台交差点の近くで、明大通りから少し入ったところにある。靖国通りの古書店街から少し離れており、少々無骨な外観もあって、一見何のための建物かはわかりづらい。
 築地に魚市場があるように、神保町にも古本の市場がある。古書会館はさしずめ場内市場。神田古書店街は場外市場といったところ。古書会館には神保町の古書店は元より、都内近県の古書店が日々通い本を仕入れる、いわば古書の総本山である。とはいえ市場は業者専用のため、一般の方には縁がない施設だ。しかし同じ建物の地下ホールでは、毎週金・土曜に古書展示即売会(通称:古書展)が行われている。十数店が参加するグループが毎週入れ替わりで開催し、様々なジャンルの本が出品される。「古書展」という販売方法自体は戦前から続いているものだが、主な客層が古書マニア・蒐集家で、古書展サイドも既存客重視の流れにあってか、普通に本を求めて神保町に来るお客さんには、その存在自体あまり馴染みが無い現状だ。初めて会場に入る人は、その圧倒的な本の量と、客層の偏り(中高年の男性)など、一種独特な雰囲気にたじろぐかもしれない。

 古書会館は3年前に新築された。とても立派な建物で、地下ホールには音響やスクリーンの設備、2階にも小さなギャラリースペースが設けられた。しかし、それらの新しい設備はなかなか使われなかった。ハードが新しくなっても、ソフトは昔ながらのスタイルだったから。
古書展会場。古書以外に雑貨や作品の展示も
 会館新築に携わった古書店数名が発案で、新しいカタチの古書展「アンダーグラウンド・ブック・カフェ」(UBC)が立ち上げられた。私も先輩古書店に誘われ参加した。この会は、もちろん古書の販売を主眼としているが、会館の設備をフルに使うことも目的の一つにしている。すなわちイベントや展示を併催する、複合型の古書展を目指している。例えば2階のギャラリースペースでは、お客さんのコレクションを中心に、何かテーマを持った「本」にまつわる展示を開催してきた。今までのテーマは、戦前小出版社の刊行物、1920年代の装幀にこだわった本、イソップ物語を主題とした古今東西の本、西洋古典文学の挿絵本、蔵書票、ガリ版印刷など。また地下ホールでは、古書展閉場後の夜、会場中央にスペースを設け、トークショー、ライブ、映画上映など様々なイベントを行う。本に囲まれた中でのイベントは、良い雰囲気で好評だ。古書展会場内にも、古本以外の雑貨や作品の展示販売、ワークショップがある。ロビーにはカフェコーナーも設け、お客さんの憩い・交流の場になっており、壁面には絵や写真も展示している。
入れたての珈琲・紅茶が100円で楽しめるカフェコーナー
 これらの試みのおかげか、従来の古書展とはかなり違う客層が来場している。金・土曜の古書展は8-9割方が中高年男性だが、UBCでは若い人も多く、時間帯によっては女性の方が多い時もある。初めて古書展、古書会館、神保町に来たという人も多い。これら新規客層の開拓には、広報活動の影響も大きいと考えている。UBCではチラシの配布に力を入れており、古書店にはもちろん、新刊書店、ギャラリー、美術館、カフェ、雑貨店などに置かせてもらっている。この配布作業が縁で、他業種の方との企画・連携も生まれた。
古書展閉場後に行われるトークショー
この日のゲストは紀田順一郎氏と東雅夫氏
 今後は神保町界隈の他業種との連携をさらに深めたいと考えている。出版社や新刊書店、大学など、これほど「本」に関係する業種が集まっているにもかかわらず、街の中核を担う古書店と一緒に何か行うということはあまり聞かない。共同で何か企画したり、展示・イベントを複数の場所で同時開催するなど、「本の街」の中で色々仕掛けていきたいと思う。

アンダーグラウンド・ブック・カフェ「地下室の古書展」サイト




西秋学
1972年生まれ。日本語と日本文学研究の専門店、西秋書店の二代目
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