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KANDAルネッサンス 80号 (2007.01.25) 印刷用
表紙◆「神田日和」のこぼれ話6

櫻井宏克さん(櫻井釣漁具)

いさかかつじ

 JR神田駅近くの今川橋交差点にある櫻井釣漁具株式会社の地下1階には、釣りのための素材や工具、釣竿などが所狭しと並んでいる。釣りは子どものころに少しかじっただけなので専門店に入ったことがなかった。魚を釣るというシンプルな行為に、これだけの技と工夫が積み重なっているのか。すごい世界だ。

櫻井宏克会長(右)と櫻井孝行社長
 三代目の櫻井宏克会長、四代目の櫻井孝行社長にお話をうかがった。
釣り具の櫻井といえば高級和竿<江戸川>。竹と漆で作った釣竿のことを和竿という。竹という素材はあるが、釣竿用の竹、そして釣竿のことを知っていて竹を切ってくる「切り子」さんが少なくなってきているのだそうだ。
 「釣竿の素材が時代とともにカーボン、グラスと変わってきても竹が先祖なんです」「竹から学ぶことを忘れないように、今でも和竿作りを若い人たちに教えています」

 明治の中頃、初代の信太郎さんが信州から出てきて飯田橋に店を出した。二度の水害や関東大震災などの試練を乗り越え、辛苦の末、<江戸川>という和竿を独自に作り始めた。<江戸川>という竿名(かんめい)の由来は神田川の昔の呼び方からきている。支店だった神田鍛冶町に本店を移した二代目の博さんは、多彩な趣味と才覚の持ち主で、後に千代田区無形文化財に指定され、名実ともに高級釣竿のメーカーとなって現在の釣漁具製造販売のもとをつくった。
 二代目の「釣竿は鳥の羽根のようにキレイな放物線を描くことが大切だ。これはすべての釣竿に通じる」という言葉を、三代目は若い人たちに言い続けている。時代の流れにしなやかに対応している会社の姿勢に通じているようだ。

 竹製の鳥かごと道具箱を見せてもらった。釣りと鳥かご、変わった取り合わせだが「この鳥かごは江戸時代後半に曾祖父の治三郎が作ったものです。当時、囮(おとり)を使ってメジロなどを捕ることがはやっていたのだそうで、とても器用な人だったらしいです」
 そのことが信太郎さんに興味を抱かせ、飯田橋に釣り具店を開くキッカケになったとか。
 その鳥かごは、素朴だが心が行き届いていて、縁側に置いておくとピッタリな鳥かごだった。今の工芸品がキッチリし過ぎているのはどうしてだろうと思っていた。そうか、縁側のないマンションのキッチリさに合っているのだ。形や技を時代の風景から見つめることも心がけねば。
 道具箱はその鳥かごを作っていた頃のもので、引き出しの中に「弘化三年丙午の歳」と記されている。弘化(1846)といえば、明治維新の20年前ぐらいだ。この鳥かごは会社の宝物だと思う。
 これを見て何かに気がついた人が新しい息吹を吹き込んでいくのだろう。実物があって、それを見ることができる。それは百万の言葉より物語る。ただし何かに気がつけばの話。感じる力が衰えてしまっては何もならない。

「釣竿も鳥かごも竹をけずるのは同じ」と三代目会長は言う。これが脈々と引き継がれている心の柱なのだ。やっぱりDNAなんだ。




つり具の桜井(櫻井釣漁具株式会社店舗)
東京都千代田区鍛冶町1-8-1 神田サクラビルB1F 
TEL.03-3252-0717
http://www.sakura-rod.co.jp/
いさかかつじ・町と人を訪ねるイラストレーター
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