KANDAアーカイブ

神田学会
お知らせ 神田資料室 神田マップ 神田写真館 百年企業のれん三代記 神田の花咲かじいさん 出版物紹介 神田学会とは 神田学会資料請求 関連リンク Perspectives in English 神田アーカイブとは リンクについて 問い合わせ

神田資料室

KANDAルネッサンス 64号 (2003.01.25) P.12 印刷用

寄稿2 都市に緑を

「都市における農業」


株式会社新農林社 社長 岸田義典

 私は長年、農業機械に関する新聞・出版活動に携わってきた。
 農業とは何かを考えて行くと結局、人間は生命系の中から生まれて生命系と調和して行かなければいけない存在であるということに気が付く。
 しかし人類が誕生して以来、生命系の歴史を見ると人間だけが増え続けて地球全体の生命系に大きな圧迫を加えてきたというのが実際の出来事である。
 人口増加の特徴は先進国でも開発途上国でも、都市人口が増大するということである。都市には産業競争力がある企業や政治の中心が常に位置し、総体的に不利な立場に置かれている農村から若者は離脱して都市に集まっている。本来、このような形は望ましくはないが、21世紀は地球全体を考えると都市の時代であるとさえいえる。
 広い意味で農業とは、人間がこの地球上で永続的に生命系とより良く調和をして行く作業を指す言葉である。
 人間の一生を見ると、人間は親から生まれて育てられ、そして自分を育て結婚をして子供を産み、その子供を育てて、またその子供が結婚をして孫を作るのを見て安らかにあの世に旅立つというのがその姿である。
 まさに人間は生命を育てるということが一生の仕事であり、その生命を人間以外の対象まで広げて育てるのが農業である。
 農業を行うことによって神様は幾つかのごほうびを用意してくれた。第1に豊かでおいしい食物である。第2に緑したたる森林や美しい花々や清らかな水といった豊かな環境である。
 第3はコットンシャツやウールの背広でわかるように繊維材料である。第4は机や木造建築に欠かせない、いろいろな林産物である。第5は人間を健康にしてくれる機能を持った薬である。
 最近の農業技術の進歩により、農業からエネルギーや有用な化学物質を供給できるような形にさえなりつつある。
 そして最後に私が最も重要だと考えるのは、人間が生命系を育てるという作業をすることによって、人間の頭脳の中に育まれる新しいソフトウエアまたは人間の新しい心や精神といったものである。
 長期的に考えると人間が生命を大切にして、それを育てることによって人間の精神的な進歩がもたらされるということである。これこそ人間が農業を行う最大の意味であると筆者は考えている。
 であるから、いつ、どのような時でも、どのような人でも生命系に触れ、その生命を育みたいと思ったならば実現できるようにしなければいけない。美しい緑や花をただ見るだけでなく、積極的に育てるという作業に携わることが重要である。
 21世紀の都市の時代にあって、都市に住む人々が生命を育てるという喜びに触れる機会を実現するための都市型農業を皆で実現しなければならない。都市型農業を行う空間はいろいろある。公園や道の脇とか建物の周囲の空間である。その他に建物の中にもさまざまな空間がある。例えば窓を生きたバラの窓にするといったことも可能である。
 最近、屋上緑化が提言されており、さまざまな取組みが始められているが、屋上も重要な空間である。ビオトープも可能である。部屋の中に葡萄棚があって、時期になったら葡萄が食べられたらどんなにおもしろいだろうか。
 これには都市型の農業技術者や、都市の植木屋さん、ビオトープ等の専門家が必要となり、新しい産業を創出するに違いない。
 農業とは食料を作り出すものという意識が強いが、先に述べたように生命を育てるといことであり、生命と関わりあうということである。
 そのような機会を活かせる新しい都市作りや、新しい農業技術を開発し普及させて行くことが必要である。
 現在地球上の生命系に大きな圧迫を加えている中心的存在は都市であるが、21世紀には、都市こそが地球の生命系を回復し育てる新しい拠点となりたいものである。

p01 メダカも泳ぐウォーターガーデン。東京交通会館のテラス(有楽町)。
p02 今や野菜でガーデニングを楽しむ時代。第1回東京ガーデニングショー(2000年4月8日〜5月7日開催)のベジタブルガーデン
岸田義典 株式会社新農林社 社長 
 1942年2月27日生まれ。早稲田大学理工学部機械工学科卒。現在、農業機械関係の新聞・雑誌を出版する新農林社代表取締役社長。埼玉県在住、毎年1.5反の水田にて米を栽培する第二種兼業農家。人類が地球生命系に生まれた癌細胞ではないかと心配している。
ページの先頭へ

戻る

ホーム ホーム