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KANDAルネッサンス 71号 (2004.10.25) P.2〜5 印刷用
特集●

神田の花咲かじいさんこと、新堀栄一さんと行く
内濠周辺、緑のそぞろ歩き

今回は、ちょっと遠出。といっても神田と隣接する内濠周辺を散策しましょう。
千鳥ヶ淵のソメイヨシノの植樹や、「さくらサポーター」で活躍中の、花咲かじいさんこと、新堀栄一さんに案内していただきながら、内濠周辺を城門をキーポイントにしながら歩いて見ます。新堀さんの口からは、休む暇もなく、植物のこと、歴史のことなど興味深いお話がたくさんでてきます。
約7キロのお散歩コース。ちょっと長めと思われる方は、半分のコースでチャレンジしてみてはいかがでしょう。
ではスタートです。


■大手門から平河門へ・東京市内の並木発祥地
お散歩人(以下S子) こんにちは。今日の待ち合わせ場所は城門ではなく、将門の首塚?(地図1)
新堀 いやいや。大手門からスタートと行きたいのですが、その前に今回のお散歩が無事でありますよう将門の首塚に寄ってから行きましょう。このあたりは企業が緑化にかなり熱心ですね。一時はカルガモのお引越し風景の名所になりましたね。ほら、立派な「シダレエンジュ」があります(地図3)。それから、ここが東京市内最初の並木が誕生した場所で、碑も建っています。明治八年のことですね。当時は「ニセアカシア」という植物を植えたそうです。私は昭和三十年に同じ場所に「シンジュ」を三本植えましてね、私にとっては感慨深い場所です(写真①・地図4)。 大手門の濠側には「ラクウショウ」というスギ科の植物があるの。ほら、12本ほどニョキッとあるでしょう。あの木は、気根(地下から空中に出る根)が特徴で、新宿御苑のそれには良くみられます。秋になると葉が紅葉して、パラパラ落ちるの。松は常緑という印象が強いのですが、この松は落ちちゃうの(写真②・地図6)。
S子 淡路公園メタセコイアと同じスギ科ですね。
新堀 大手門の濠端には枝垂桜が植えてあっていいですね。地方にあるお城でも大手門といいうのはお城の正面にあるでしょう。だから、ここが江戸城の玄関だったのかな。(写真③・地図5)
S子 そうか、確かに品を感じますね。それから、このあたりは歩道が広くて歩きやすいですね。
新堀 本来、お濠端は柳の並木だったのだけど、今は先ほどのように枝垂桜などに替えられています。それは、柳の剪定技術が難しいのと、手入れもかかるんでしょう。このあたりはエンジュの並木になっていますが、ときおり「イヌエンジュ(別名)クロエンジュ」があります。幹が黒いのが特徴ね。植物の名に「イヌ」がつくのは、その植物には気の毒ですが順位でいうと下の方を指すようです。
S子 それにしても、すでにいろんな植物が目に入ってきますね。
新堀 そうですね。しかも対岸のオフィスビル群が高木だけでなく、間に低木なども入れて緑化しているのがいいです。中でもクスノキが多いのは、環状七号線のクスノキ並木に見られるように、車の騒音や排ガスを防ぐために植えられたのです。昭和三十年以降、クスノキは並木として良く植えられましたね。後で行きますが、警視庁のクスノキは有名ですよ。

S子 ただ緑を増やすだけでなく、植物の特性を生かしていることがよく分かります。
新堀 それから、消防庁前にあった一人ぼっちのプラタナス。あそこは以前派出所だったのね。そして、立ち番のおまわりさんを日差しから守るため、緑陰樹としてプラタナスが植えられたのです。きっと戦前からあったと思いますよ。(写真④・地図7)
S子 先日の台風十六号(平成十六年八月三一日)で倒れてしまったのが残念ですね。あ、左側に大きなイチョウが見えます。
新堀 「震災イチョウ」ね。もとは、毎日新聞の角にありましたが、関東大震災の火災にも負けず生き残ってね。その後今の場所に移植されたんだけど、芯がないのでもしかしたら、落雷にでも遭っているのではないかな。大変な人生を歩んでいるイチョウだね。(写真⑥・地図8)
S子 ちょっと痛々しいけど、生命力を感じます。
新堀 その側にあるのが和気清麻呂像。昭和五一年に建立されたのだけど、一般的に銅像っていうのは、仰ぎ見るように高く設計されているものだけど、この像は台座を低くしてあるのが斬新だね(写真⑤・地図8)。
■平河門から北桔(きたはね)橋へ
新堀 平河門は高欄が木なので風情があります。右へ折れないと入れない面白い形をしていますが、浅野内匠頭長矩や切腹された人、病死した人がこの門からだされたことから、「不浄門」ともいわれています(写真⑦)。
S子 ちょっと血の気が引く話ですね。それから、この大きな石は一体何でしょう?
新堀 いいところに目がつきましたね。これは江戸城を築城した太田道灌の追悼碑です。この立派な石は、虎ノ門の城門の石を使っているの。見事でしょう(写真⑧・地図10)。
S子 石?
新堀 お城の入口に良くみられる桝形の石のことです。さて、もう少し行くと対岸に毎日新聞社がありますが、このビルは以前二階建ての建物で、イサム・ノグチという彫刻家が設計した庭園がありました。芝生で二つほど山があっておもしろいデザインでしたよ。
S子 今見られないのが惜しいですね。
新堀 竹橋周辺には木イチゴがあって、よく摘んで食べたな。もう少し行くと寒緋桜があります。春を先取りして咲く桜で、赤くて良く目立ちます(地図11)。
S子 沖縄での開花がよくニュースになりますね。もうすぐ北桔橋です。
新堀 北桔橋は橋長が極端に短いでしょう。それは敵が攻めてきたときに橋を上へあげて(はねて)しまうため。そこからこの名前がついたのです(地図12)。
S子 石が見事に敷き詰めてありますね。
新堀 石垣に生える草は年に一回お掃除で刈り取っているのです。そうしないと石垣がやられちゃうからね。それと表面に見えている石一つ一つの控え(奥行き)が二メートル以上あって長いの。だからいくら積み上げても崩れないのです。私も以前外堀の改修工事に携わった折りに見て驚いたのですが、石の裏側には漬物石に使えそうな立派な玉石がいっぱい詰め込んであるからとても頑丈なの。それで、石の重さは半端じゃないから一日に工事ができる区間が決まっていてね。ひずみが出ないよう非常に慎重な工事だったな(写真⑨)。
■北桔梗門から乾門へ
新堀 ここでぜひ見て欲しいのは、「ヤドリギ」です。(写真⑩・地図13)特に冬の季節には見つけやすいのですが、落葉広葉樹に寄生する常緑低木なのです。丸く固まりのように見えますが、木の実を食べた小鳥から排泄された糞が、木に付着してそこから芽が出ているわけですね。区内ではこのように見られるのは珍しいですよ。地方では縁起木として扱われ、枝葉は漢方薬として用いられているようですね。
S子 名前がいいですね。冬になったらもう一度見こようっと。
■乾門から清水門へ
新堀 乾門のそばに区内には一本だけと思われる小彼岸桜(地図14・15)があります。それと乾門の枝垂桜は見事ですよ。私のお勧めするお花見スポットの一つです。そしてこの先代官町通りに入る前の土手一帯には、フキの群生があってフキノトウの季節になると、それは美しくなりますよ。それからもう一つ。高速に入る手前にある三角形の島には、以前「トウシャジン」というキキョウ科の可憐な花が自生していました。その花を昭和天皇がこよなく愛されたと聞いています。
S子工芸館も古い建物ですが。
新堀 そうですね。近衛指弾司令部があったところです。戦後は取り壊すか保存するかで長らく行く末が案じられていたのですが、昭和五二年に東京国立近代美術館工芸館として新たな息吹を吹き込まれました。喜ばしいことですね。では、北の丸公園に行きましょう。
S子 この辺りは、戦中、戦後の日本の歴史を偲ばせる場所ですね。
新堀 そうです。北の丸公園に入ってすぐに都内では珍しい竹やぶがあるのをご存知かしら?以前は竹の子がとれたとか。ほら風情があるでしょう(写真⑪・地図19)。
 北の丸公園は、戦争中は軍隊の練兵場がありました。私が千代田区役所に勤めていた頃(昭和三十年代)は、警察学校と野球場が二面ありましてね。当時は城門もありましたよ。
S子 今ではその名残が感じられないくらい、木々が生茂って緑濃い公園になりましたね。あ、そろそろ清水門が見えてきました。

■清水門から田安門へ
新堀 ここへ来ると、いかにお城を敵から防御したかがわかりますね(写真⑫)。
S子 他の門と違って、落ち着きますね。
新堀 昼休みはここでキャッチボールなんかしましたよ。清水門は枝垂れ柳が有名でね。風にそよぐ柳とお濠の水の調和がいい(地図22)。
S子 下へ降りてみましょう。
新堀 そうね。清水門の枝垂れ柳の道には、両側に疑木柵という柵が設けられています。これは金網の型にモルタルを塗り、釘で木の表皮を施しているのですが、良く出来ているでしょう。これほどまで精工に作られた疑木柵はないですね。すべて手作業です。
S子 これもひとつの職人技ですね。
新堀 それから清水門を出てすぐ右脇にある三本の木。これは「センダンの木」といって、 五月になると紫色の香りの良い花が咲きます。その後実は、数珠玉に使われることもあるようです(写真⑬・地図24)。
S子 開花時期は五月ですね。
新堀 それから、NTTビルの方角に水門があるんだけど見えるかな?あそこは日本橋川に通じる水門で、お濠のお水が多い時はその水門を開いて、日本橋川へ流しているんですよ。
さぁ、千代田区役所の前を通って、田安門へ行きましょう(写真⑫・地図24)。
■田安門から半蔵門へ
S子 田安門までの上り坂は、緩やかなようで実は勾配がありますね。
新堀 千鳥ケ淵と牛ケ淵の土手の斜面に、石造りの水路が走っているでしょう(写真⑬・地図25)。あれは、千鳥ケ淵の水位があがると、その水路を通って滝のように水が流れ落ちてくるのね。水面の差が十二メートルはあるはずですから、その勢いに、多くの文人が詩を歌ったといいます。
S子 一度見てみたいですね。
新堀 さて、田安門は桜の名所ですっかりお馴染みです。門まで並んでいる両側の十二本は千代田区で最も古いソメイヨシノです。立派ですね。田安門を入って左側に神社があります。殉職警察官の霊を祭ってあるのですが、そこの大木のイチョウが見事です。その近くに昭和天皇がお上りになったお立ち台があって、関東大震災後の神田の復興状況その台からつぶさにご覧になったといわれています。
S子一度その場所へ上がってみたいですね。 
新堀 もう少し上ると、常燈明台が聳えています。もとは、明治4年に靖国神社に祭られた霊のために建てられました。昭和五年に今の地に道路工事のため移転されたのですが、品川沖の船が常燈明台から放たれる灯火を目印にしていたくらい、よほど見晴らしが良かったのですね。今も夜になると光が灯されますよ(写真⑭・地図24)。
S子 えっ、ここから品川が望めたのですか。
新堀 そうです。この辺りはお月見の名所だったようですから。さて、この坂を上って千鳥ケ淵公園に入りましょう。
S子 この千鳥ケ淵にあるソメイヨシノ(約二百本)が、昭和三十年代に新堀さんの監督のもと植えられたのですね。
新堀 そうです。もうだいぶ古木になってきているので、病気をしているヤツ、治療が必要なヤツが多いの。
S子 もうしばらく行くとボート場がありますね。お花見の季節は行列ができちゃうくらい。
新堀 このボート乗り場へ行く下り坂は、もともと消火用の水を給水車にくべるための車寄せ場として使われていました。その名残りなの。
S子 千鳥ケ淵のお水を消火用に利用していたのですか。もうしばらく行くと右側に戦没者墓苑が見えます。
新堀 ここも、静かでいいところですよ。大寒桜が五本ありますから、一度見てください。
S子 だいぶ歩きましたね。半蔵門が見えてきました。
新堀 半蔵門から広がるお濠の景観は何ともいえないですね。左右の調和が美しいです。半蔵門は、多摩川を羽村でせき止め、そこから水を取り入れて四谷大木戸(新宿区内藤町)まで引かれた水道管(玉川上水)をわたって流れてきた水が、半蔵門から江戸城内へ導水されていました。だからこの辺りの住民は玉川上水をつかっていたのです。将軍様と同じ水を使っていたことになりますね。
■半蔵門から桜田門へ
新堀 こちらのお濠の法面には彼岸花が群生していて9月のお彼岸の季節になるとあの朱色の花たちがゆらゆら揺れていて美しいですよ。それに国立劇場前庭の松と合間って、情緒があります(写真⑰・地図36,37)。

S子 歩道の並木は立派ですね。何という木ですか。
新堀 これはね「ユリノキ」といいます。別名「ナンテンボク」。葉がお祭り半纏の形に似ているでしょう。実はこの木に咲く花から取れる蜜が蜂蜜として売られています。ユリノキの蜜は品質がよいらしいです(写真⑱・地図35)。
S子 皇居周辺のユリノキから蜜が採取できるのですか?
新堀 そう、僕も驚いたんだけどね。今度その蜂蜜買ってくるよ。さてと、そろそろ桜田門が近づいてきますが、手前にある警視庁のクスノキは見ておいてね。昭和五五年に九州からやって来た当時でも相当の高木だったのを、そのまま持ってきて移植しました。そのような技術はまだ当時は珍しくて注目されました(写真⑲・地図40)。では、桜田門へ入りましょう。
S子 ここの門も立派ですね。
新堀 こちらは枡形の完全に残っている城門です。門をくぐって五〇メートルほど歩いたら門の方へ振り返ってみて。ちょうど城門が額縁のフレームのようなって、その中にソメイヨシノが一本きれいに納まっているように見えるでしょう。私はこの門を別名「桜の額縁」っていっているの。誰かが考えてここに桜を植えたのか分かりませんが、非常にドラマティックな風景写真が撮れそうだね(写真⑳・地図43)。
S子 なんてしっくりと納まるのかしら。

新堀 さて、皇居前広場をゆるりとお散歩しましょう。
S子 やはり松の木が目に入りますね。どのくらいあるのでしょう?
新堀 そうですね。約二千本だと思われます。松も混み過ぎず、非常に開放感がある広場ですね(地図44)。
さぁ、今日の終点、和田倉噴水公園へ行きましょう。こちらは平成七年に皇太子殿下ご成婚記念に整備されて美しい噴水公園になりました。レストランもあって、デートにもお薦めですよ。今度はお気に入りの人とお散歩を楽しんでみてください。






 
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