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KANDAルネッサンス 69号 (2004.04.25) P.12 印刷用

寄稿 都市に緑を

屋上緑化に「七K」の期待

古川 興一 
株式会社創樹社 主幹「Green Archi. Tribune」、「Housing Tribune」

先日、下町のあるマンションの管理組合の理事さんから電話がありました。「築二十年のマンションなのですが、屋上緑化をしたいので、どこか参考になる屋上緑化マンションを紹介してほしい」ということでした。
 話を聞くと、市街地の中の一棟マンションだが、近所に公園もなく、子供を遊ばせておく場所がない。交通が激しく、子供を一人では外に出せない。それに入居者に年寄りも多くなり、緑の中でのんびり憩える場所も必要になっている。そこで、今利用していない屋上に庭園を含めた憩いの場を作りたい、というのです。
 ついに屋上緑化もここまできたか、というのが、そのときの率直な嬉しい気持ちであり、屋上緑化もいよいよ本物になってきた、という想いを強くしています。
 今、屋上緑化はヒートアイランド対策のひとつとして注目され、国策として取り上げられ、地方自治体も屋上緑化への支援策、助成策を次々に打ち出しています。東京都が全国に先駆けて実施した「一千平方メートル以上の敷地を持つ建築物は屋上面積の二〇%以上の緑化を義務付ける」という“緑化の義務付け”は、今は全国の地方自治体に伝播しています。
 普通なら、こうした行政の後押しもあるのだから、急速に屋上緑化は進むだろう——と誰もが思うでしょう。ところが、現実にはまだまだ厳しいものがあるのです。東京都の義務化にしても、これによって屋上緑化面積が増大していることは事実なのですが、東京都が義務化の免責事項としている「人の出入りが可能で、利用できる」を逆手に取り、安全手すりをつけなかったり、傾斜屋根にしたり等、義務化逃れも露骨に目立つのです。建築費のアップ、さらには継続的な維持管理費用を嫌ってのことです。
「役所が決めたことだから、やむを得ずにやる」緑化は、決してうまくいかない。緑は生き物であり、生き物への愛情なしにただ植えただけの草木や樹木は、結局、手入れもされず枯らしてしまうのは必定だからです。最初は屋上緑化が宣伝されながら、放置され、今は見るも無殘な屋上がたくさんあります。
 NPO神田学会が協力した屋上でのソバの栽培がそうであるように、屋上緑化は、その効果を実感してこそ、大きく開き、普及するのだと思います。冒頭に紹介したマンションの屋上緑化もその好例です。屋上緑化による憩いのスペース創造で、オフィスビルの空室がなくなったという例も聞きます。屋上緑化の多彩な効果例をどんどん発信していくことが大事なのです。
 屋上緑化の「七K」をまとめてみました。誌面の都合で、詳しくは説明しませんが、是非イメージを膨らませ、七Kの屋上緑化を普及、推進してほしいものです。
1Kando(感動)=花や緑の美しさへのときめき。心の優しさ、五感の育み。
2Koryu(交流)=花や緑をテーマに会話は弾む。コミュニケーションの場に。
3Kanko(健康)=アロマテラピー、園芸療法が話題。病院や老人福祉施設にも。
4Kankyo(環境)=CO2削減、建物の断熱性向上。ヒートアイランド現象の緩和に。
5Kyoiku(教育)=花や緑、虫や鳥との関わりを学ぶ。野菜作りも。情操教育に。
6Keizai(経済)=屋上緑化の新技術、商品開発、新市場の創造、資産価値の向上、経済活性化への期待。
7Kuka(空間)=屋上という新空間の多彩な開発提案。菜園、庭園、ビオトープ、レストラン——等。付加
価値空間へ。

屋上にビオトープ(野生生物が共存共生できる生態系を持った場所)を作った例。最近は企業やマンションの中庭や屋上などの庭をビオトープにしたガーデンも増えている。
古川 興一(ふるかわ こういち)株式会社 創樹社 代表取締役編集主幹
東京都出身。中央大学法学部卒業。日本工業新聞・サンケイ新聞の記者・編集委員として建設省・農水省・通産省記者クラブを拠点に建設・住宅分野を核に行政、産業・経済を幅広く取材。1983年に雑誌・出版事業の「創樹社」を設立、代表取締役主幹。1988年には屋上開発研究会の設立に係わり、事務局長。2002年にNPO法人に移行し、2003年3月まで理事・運営委員長。住宅産業関連の定期刊行物「ハウジング・トリビューン」の編集・発行を中心に、書籍の発行・編集事業などを幅広く手がける。2003年4月には緑化・環境建築の専門誌「Green Archi. Tribune」を創刊。
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