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KANDAルネッサンス 68号 (2004.01.25) P.7 印刷用
我ら神田っ子29

三代目絵師 船橋一泰(いったい)さん

(神田佐久間町3丁目)

 昨年は、江戸開府400年を記念したイベントが目白押しでした。江戸の文化について再認識、再発見をされた方も多かったことでしょう。
 さて、今回ご登場いただく絵師船橋一泰さんは、江戸の文化、伝統の代表格ともいえる「神田祭」をはじめ、いわゆる「祭絵」にこだわった作品を描き続けています。
今では、神田明神の機関誌の表紙絵を手がけ、またグリーティングカードを海外で販売したところ好評を博すなど、今年も意欲的な活動が期待されています。

グラフィックデザイナーからの転身
「私は、もともとデザイン会社に勤めていました。中でも広告デザインは、PRする商品の特徴はもちろん、ターゲットにしているお客さんのニーズや、時代の流れを読み、どのようなイラストレーターに作品をお願いするかを考えていきます。イラストレーターを決めることは商品生命を左右するほど大事な仕事。一般的には華やかなイメージを持たれる業界ではありますが、意外と地道な裏方的作業が多いのです。8年近くそのような仕事をしておりましたので、数々のイラストレーターや画家にお会いすることができました。それと同時に私の心の中では裏方よりも作品を発注される立場になりたい、という思いが次第に強くなっていき、仕事を終えた後、独学で絵を学び始めました。目に入るものは何でも模写し、時には採点してもらい、その繰り返しを経て28才の時に本気で絵を描こう、絵で生きていこうと決心したのです。もともと絵を描くことは好きでしたが、絵で食べていくとなると話は違います。しかも人とは違う作風で、今まで誰も扱ったことのないものをテーマに描きたいという野心ばかりが高まり、決心はしたものの、現実との狭間でずいぶん葛藤していました」。穏やかにお話をされる船橋さんですが、28才の決断後、約1年にわたる下積みは苦痛と焦りの日々の連続だったようです。
「苦し紛れの中、頭に浮かんできたのが、何を描くかというよりも何をやっている時が自分らしいかと考えてみたのです。そして出てきた答えは『神田祭でお神輿を担いでいる時』だったのです。そうだ、神輿しかないっ!と思いましたね。道が開けたような感じでした」。

目指すは“いったい”の絵
 船橋さんは、その後意欲的に神輿を中心とした「祭絵」を描き続け、その数が今では50点以上になります。しかし船橋さん仕事は、絵を描き続けるだけではありません。作品の売りこみから商品開発まで自分でおこないます。デザイン会社に勤務していた頃の経験がずいぶん生かされているようですが、やはり心強いのは地域の応援だといいます。都内の大型文具専門店に船橋さんのグリーティングカードを紹介してくれたのも近所にある文房具屋さんのおかげ。そのご縁がきっかけで、オリジナルのブランドい“いったい”を立上げました。今では、海外市場でも販売されるようになりました。
「いずれは、私の絵を見れば誰もが『いったい』の絵だ、とわかってくれることを願っています。ラッセンやマックナイト、ヒロ・ヤマガタみたいに」。
 そんな船橋さんの描く祭絵は、被写体の姿形をありのまま表現した水彩画。祭の絵を描く場合は事前の取材はもちろんのこと、一番の見せ場が来るその瞬間まで待ちます。「いくら、構図として相応しくても、ありえないものは描きません。私は絵を通して音や匂いを伝えたいのです」。
神田明神の冊子表紙を飾った「神田神社大神輿宮入」に代表されるように、今にも動き出しそうな躍動感ある作品は、まるで命が宿っているかのよう。また、グリーティングカードにある焼きとうもろこしは、いまにも醤油の香ばしい香が漂ってきそうな作品。船橋さんが「おいしい」と思えるまで店主に焼かせ、描いたもの。写真では味わえない造形美と船橋さんの実直さが感じられる作品です。

神田で生まれたという幸運
「もしかしたら私が祭絵を描くことは、きっとそういう定めだったのではないかと思います。神田で生まれ、こよなく神田祭を愛している私が、大好きな祭の絵を描いているのですから。幸運としか言い様がありません。祭は古くもなく廃れもしない。これからは、神田はもちろんのこと日本の祭文化を絵で残していきたいです」と船橋さん。将来は日本の祭絵で古典をひらきたいと夢は膨らむばかり。
 今夏には銀座にて個展を開催する予定。地域の応援のもと、船橋さんの夢が何色に染まっていくか楽しみです。

p01 (ポートレイト)
p02 グリーティングカードからパズルなど、華やかな“いったい”商品の数々。
お問合せ:03-5813-3620
船橋一泰 絵師 3代目
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