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神田資料室

KANDAルネッサンス 67号 (2003.10.25) P.4〜5 印刷用

特集 通りが変われば街が変わる!
その2


神田の「オシャレ」の本質は、その新古ではなく、少々の変化ではびくともしないしなやかな「都市の空気」をどれだけ生み出し得るかにある。
江戸開府500年を迎える時、神田にしなやかな「都市の空気」は感じられるだろうか?


「しなやかな」町への再生提案
-都市の「糸」としての神田警察通り-

野原 卓さん 東京大学大学院工学系研究科 都市工学専攻 助手

 —神田警察通り—神田の中心部を貫いていながら、明確な印象がやや薄いこの通りを歩いてみる。「カ・タ・イ」。ガチガチにカタイというのが第一印象である。まず、物理的に固い。道路は一方通行で6車線もあるアスファルトの車路に占拠され、道の両側には、コンクリートや開かないガラスの中堅オフィス(神田の中では比較的間口が広い)がビッシリと建ち並ぶ。水や緑というような「柔らかさ」を感じる要素も素材も、空が見えるような「隙間」も少ない。それにもまして「人」を誘い込む吸収力がない、いや、そもそも人が歩いていない。都心とも至近距離の抜群のロケーションにありながら、真っ先に悩むこととなった神田地区のオフィス空室問題の本質は、この「固さ」にあるのではとさえ思う程である。
 銀座、青山、六本木、原宿、代官山・・・。近年、オシャレなイメージで思い浮かぶ街を挙げれば枚挙に暇はないが、元来「粋(≒オシャレ)」な文化を持つ「都心」地区であった、神田。江戸から明治期にかけては、武家地の落ち着いた大らかさと町人地の小気味よさとが互いに混ざり(時にはせめぎ)合う地区であり、そこから生まれた気質が「粋」—何人も温かく受け入れる懐の広さ、何者にも屈しないが頑固に対抗しないさりげなさ、そしてしなやかさ—であろう。元々、神田地区では鍵をかけない開け放しの生活がなされていた。
道路や庭、隣地にはみ出して植栽し、町を着飾っていた。このオープンエンドな生活、自らを開け放つ生活は、自由に入ることのできる気軽さと、コミュニティ全体によるセキュリティ機能との両輪がそろって成立する生活様式だが、それが今ではコミュニティのない空箱を完全に閉じることで守る町と化している。これは、地区の人々の意思というよりも、むしろ開け放しの気質が、オフィス街の侵入になす術を持たなかったという逆説的結末なのかもしれない。
 江戸期から明治半ばまで、現在の神田警察通りは、その原型となる幾つかの細街路はあるもののまだ一本のつながった街路ではなかった。私見では、神田警察通りが現在の線形でつながったのは、明治40年前後、東京市電の敷設及び駅の設置に関係しているのではないかと推察しているが(どなたかご存知ですか)、いずれにせよ、武家地と町人地という江戸期の特徴的な二つの都市構造を持つ地区を貫き、これらを繋ぐ通りとして挿入されることで地区が都市に開かれていった過程であったといえよう。そして、現在、改めてこの地区におけるこの通りの意義が問われている。
 では、この硬直化した街を解きほぐし、しなやかな「織物都市(Fablic City)」再生の「糸」として、この通りへの新たな機能の挿入をいくつか考えてみよう。

1「オープンストリート」
 神田地区の道路率は、他の地区よりはるかに高い。つまり、道路と言うオープンスペースがふんだんに存在しているのである。まず、神田警察通りそのものをオープンスペースと捉える。現在一方通行6車線もある広幅員道路だが、これを広場として考え、舗装も柔らかく統一したい。また、歩車路区分は、時間に応じて車線数を自由に変更したり、時には大きな歩道、時には歩行者天国、として必要に応じたオープンスペースを確保し、境界線は水や移動可能な簡易的な緑など柔らかい素材で区切ることも可能であろう。
 幅員4〜6mの細やかな街路も、時間帯でうまく交通制御するなどして、様々な形で活用することができる(一定時間帯だけオープンレストランにする等)。


2「結び目」1
 神田警察通りには、南北に挿入された幹線道路との結び目がある。市電が通った時代は、結節点としての駅もあったこの場所は、興味深いことに、各建物も少しずつそれを意識しているようである。このスペースや、屋外階段を利用して、軽やかな交流機能(カフェや情報施設)を付加してみる。また、通りは直線でありつつも何箇所かに屈曲点をもつ(何本かの街路を繋ぎ合わせたことが伺える)。そのため、「アイストップ」となる箇所がある。上部の壁を利用してロッククライミングをしてみたり、ビルボードとして利用したり…。通りに引きつける仕掛けとして利用できる場所である。

「アイストップ」をロッククライミングやビルボードに用いてみたり…

3「多孔質」
 
 現代生活の多様性の中では、近代主義的な「はたらく」「すむ」という機能分類はもはや意味を成さない。働く人もその職場の「住人」であり、街は広い意味での「生活力」を獲得する必要がある。
高層ペンシル賃貸ビルが既に地区資産となっている以上、快適で「生活力」ある街にするには、ある程度の減築・オープンスペースの創出は不可避である。空き室も一時的にスケルトンの状態に戻し、借り手がつくまでオープンスペースとして利用してもよい。ビルが壁から多孔質に変化する。また、街区レベルでも減築して快適なオープンスペースを設けたい。
ただし、ここで重要なのは、ただのスペースではなく、活動(カフェ、店舗、アート、図書館など)が直接広場に面して存在してことである。

ペンシルビルは1階の壁を取り払い、繋いで開放する。空き室は穴を開けてみる。

4「吸収力」
 各オフィス・公共施設の各建物の1・2Fを開放する。不要な間仕切り・隣接する壁は全て取り、風通しもよく人も自由に動くことのできるスペースとして公共空間と捉える。機能は憩う場であり、公共-民間という枠組みはなくす、自由に出入り、気軽に利用できる施設と言う意味の公共(コモン)スペースである。「本」ストックを活かしたカフェと本屋の融合施設、大学・学校を開放した情報施設、インストラクターのいるスポーツショールームなど、コモンの機能は自由な組み合わせで発想できる。

オフィスの低層部を開放し、気軽に利用できる「コモン」スペースに。

「結び目」2

交差点の隙間、階段を利用して軽やかな交流・憩いの場を付加する。
















アンケートの結果について
今回の特集を機のおこないました、「神田警察通り」アンケートの結果につきましては、次号にて発表させていただきます。どうぞお楽しみに。
野原 卓  東京大学大学院工学系研究科 都市工学専攻 助手
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