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KANDAルネッサンス 65号 (2003.04.25) P.14 印刷用
神田人物誌

鏑木清方①

中西隆紀

 画家鏑木清方は神田生まれ。弟子に伊東深水などがいるので、美人画の系統だろうと見るのは勝手だが、彼が挿絵画家や美人画家の枠を遥かに越えていることは誰の目にも明らかだろう。
 私は清方が好きで、機会のある度にかなりの作品を見ている。落語家「三遊亭円朝」が茶をすする一刻を絶妙迫真の描線をもって描き上げた絵や、針箱とランプを横に「塵中」を思い、ぽつねんと座る一葉の絵の前では二十分くらい立ち尽くさざるを得なかった。
 これらは例の「築地明石町」と並ぶ傑作だと思う。ある評論家は、「明石町」を国宝にしろとまで言っているくらいだが、実にこれも、黒と少しばかりの赤の対比が目に焼きつくほどに鮮烈である。そしてその黒とは、被布と黒塗りの下駄であり、そこに赤のスパイスである半襟と赤い鼻緒を一振りふうっと吹きかけている。
 先の号では樋口一葉を紹介したが、もうひとつ清方の作品に「一葉女史の墓」がある。これは画家の女史に対する思い入れ過多のあまり、線がこがらしとともに流れて留まるところがない。一葉が亡くなったのは寒い季節であった。
 この絵のシュールなのは、作品の登場人物が作者の墓にもたれている設定だ。「美登利」の化身が水仙を抱きながら、作者一葉の墓にもたれているのだ。美登利はご承知のように「たけくらべ」のヒロインだが、この美登利に清方は、日本のオフェーリアを創出させたかったのではないかと思えた。
 ちなみに、清方は神田佐久間町の生まれである。しかし、番地はどの本をあたっても出ていなかったのは残念である。
中西隆紀 フリーライター
1947年、大阪生まれ。多摩美術大学油画科卒。神田で『本の街』を創刊。『神田300年地図』発行。著書に「幻の東京赤煉瓦駅—新橋・東京・万世橋」(平凡社新書)。
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