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KANDAルネッサンス 63号 (2002.10.25) P.6 印刷用
我ら神田っ子24

原久 三代目 竹之内純一さん


 前回ご登場の呉服屋のご主人、木村さんからご紹介いただいたのは、紳士服のオーダーや学生服を扱う洋服店「原久」の三代目、竹之内純一さんです。ピンと背筋の伸びた純一さん。やはりスーツを美しく着こなす紳士の貫禄を感じます。

大晦日は、お蕎麦屋並みの忙しさ
 原久さんは、既製の紳士服と学生服が主力商品。中でも学生服は20校以上もの制服を扱っており、入学式間近の2月になると無休で対応に追われるほどの忙しさ。昨今の少子化の影響もあり学生服はデザインが多様化し、意外にも高価な商品のようです。「親子二代で学生服を買いにきていただけると嬉しいものです。そのご家族の成長を垣間見させていただいているような気分です。でも、制服といえば男の子はやはり黒の詰襟。それで充分」と、微笑む純一さん。
「今は2月が繁忙期ですが、戦後から昭和30年代にかけては、大晦日が最も忙しかったと聞きます。それは、紳士服を買うのは、年末が主流だったという当時の生活事情が大きく影響しています。当時は新年に新しいスーツに袖を通して、ご挨拶に出かけるという習慣があったので、特に大晦日になるとかけ込んでくるお客さんもいらして、除夜の鐘と共に値切られたり、シャッターを降ろせるのは新年を迎えてからだったそうで、その賑わい振りは異常だったようです。今は安くスーツを手に入れられる時代になったので、一年の節目にスーツを新調するという習慣はなくなり、いつでも気軽に選べる時代になりました」と、純一さん。
 大型店の旺盛振りや安ければ良いという風潮が強くなり、個人経営の紳士服店が持つ味(豊富な商品知識と信頼、小回りの効くサービスなど)が見落されてはいやしないか、と純一さんは警鐘を鳴らしています。確かに、1970年のテーラーの店舗数は全国で2万4702軒、従業員は7万8874人だったのに対し、97年には7649軒、1万7959人(平成14年9月8日付毎日新聞より)と激減しているのが現実でもあります。

神田の紳士服店としてこれからも、ずっと
 原久さんの創業は昭和9年。初代竹之内五郎次さんが横浜での奉公後、大正10年に東京神田作柄町(現須田町みずほ銀行付近)にお店を構えました。関東大震災や戦火を潜り抜け、順調に事業を拡大してきた五郎次さんでしたが、昭和28年8月に若くして他界。追い討ちをかけるように同年10月には隣家の火災によりお店と仕入れたばかりの商品を焼失するという痛手を被りました。昭和28年5月に誕生した純一さんにとって、ご自身の誕生した年に遭遇した祖父の死と、お店の転機は運命的な使命感にも似た結び付きを感じます。
「だからお店を継ぐつもりだった」と、語る純一さんの眼差しには、初代への畏敬の念が込められています。
 一見クールなイメージがある純一さんですが、実は大のお祭り好き。ご両親からの影響を強く受けたとのことですが、神田の街そのものが大好きといいます。
「普段はさっぱりしていて、ご近所付き合いも程よい距離ができています。だけど何かあった時の結束力ときたらどこにも負けないくらい強いですね。子供達にもその素晴らしさを伝えてやりたいと思います」。

スーツには着る人の生き方が映ります
「年を重ねるごとに生活環境や求める物、目的が変ってくるものです。そして服にもその時々の人生ドラマが重なるものなのです」。
 スーツを見ればその人の生き方が見えてくると話す純一さん。毎日着るものだからこそ、疎かにはできません。原久さんの扱う生地はほとんどが国産。ネクタイは他店にはない品揃えをと、色、柄共に個性的なのが特徴。
「商売柄、通りを歩くサラリーマンの着こなしに目が行きます。神田を行き交うサラリーマンが年相応のおしゃれを楽しんでいただけると嬉しいですね。きっといつかは、安さだけで満足できない人達が戻ってくると思います」。
 そこで、純一さんよりスーツを美しく着こなす3つのポイントを教えていただきました。
 1.毎日同じスーツを着ない
 2.手入れ(ブラッシング・アイロン)はこまめに!
 3.ポケットには物を入れ過ぎない。
 まずはこの3つを心がけるだけでずいぶん印象が変わるとのこと。
 オフィス街、神田にお洒落な紳士が増えると、きっと街のグレードもアップするでしょう。できれば、豊かな人生観を感じさせるスーツ姿の紳士が増えることを願わずにはいられません。




竹之内純一 原久三代目 
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