新春特集 神田の未来を創る7人たち
コマンドN (台東区上野1-2-3BF)
代表 中村 政人さん(37歳)(美術家)
設立 1997年2月
秋葉原限定のビデオアート展を開催せよ
昨年2月、秋葉原の町一帯にサイトアートなる新しい文化が誕生した。その名は「秋葉原TV」。
「普段町で見かけるものをアートというフィルターを通して見たらどのような芸術性が生まれ、そのような価値観を見出すことができるのかが私のテーマ。」と話すプロジェクトリーダーの中村政人さん。
93年に銀座でゲリラ的に開催した路上展がきっかけとなり企画されたプロジェクトだが、「プライベートな意識を、パブリックな空間にしかけることにより、現在の街の構造を見つめ直してみたい」というのが基本テーマ。そこで秋葉原電気街のテレビモニターやビデオデッキ、コンピュータに映像作品をひたすら流しつづけるという挑戦的なアート展を昨年2月に開催した。
「どのように受け入れるかは見る人の自由。目の前の風景をいかにパーソナルな視点で共有できるか、その手段としてアートが成立するのです。電気機器商品が並ぶ秋葉原の特性を利用し、既存の機器を使って日常の一部としてビデオアートを放映することにより、それに気付いた人のみが鑑賞できる環境ができあがります。つまり、環境(ハード)には手を触れず、映像作品(ソフト)を導入するだけで町を活性化し、見る人とのコミュニケーションを成立させる新たなパブリックアートの試みといえるでしょう。今年も第二回目として3月に開催する予定です」。
中村さんの本業は現代美術家としての制作活動。スタッフにはアートプロデューサーや学芸員、美術の先生などさまざまだ。
体験してこそアート
「現在、日本の美術学校はほとんど郊外に移転してしまいました。だからこそ現代社会にぶつかっていけるアートプロジェクトが必要です。都内に小さくても目立つ空部屋を美大生用にゼミで開放することで、その周りには生徒が集まり始め、刺戟が生まれます。そして、リアリティが生まれ、やがて文化が生まれ、町が成長します」。中村さんは現代社会の中で、若手が自由に漂えるスペースが必要だと唱えます。
「大切なのは街の魅力を若い人達にどのように伝えていくのか。そこから刺戟が生まれ、町に活力がでてきます。アートは体験してみないと分かりません。将来にはこのようなアートプロジェクトが、教育として東京のど真ん中で成り立つといいのですが」。
社名についている「N 」は「NEWやNETWORK」という意味。中村さんが、次回どのような形で我々の目の前に登場するか楽しみだ。

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