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KANDAルネッサンス 27号 (1993.10.20) P.13 印刷用

第55回神田学会レポート

公共の色彩を考える

財団法人日本色彩研究所内 公共の色彩を考える会 田村美幸

 皆さんは、今から十二年前、丁度東京都知事が美濃部さんから鈴木さんに変わった時、都バスの色がそれまでのブルーを基調としたものから黄色の車体に赤の帯という激しいコントラストに塗り替えられて走り始めたのを覚えていらっしゃるでしょうか。それでなくても騒がしい色彩に溢れてえる東京の街に、この黄赤バスが走り回れば、日本の首都ととしての東京の品位に関わることだと、故小池岩太郎芸大名誉教授を中心とした、同憂の士が集り発足したのが、我が「公共の色彩を考える会」です。
 そして、会として早速鈴木知事に具申書を提出したところ、バスの色は改善されて、現在走っているベージュに緑色の配色の都バスになったのです。
 その後私達の会は、毎年東京で一回と、日本各地で開催するシンポジウムを軸にして、騒色公害に対する住民とマスコミの橋渡しなど環境色彩の問題点を取りあげて様々な活動を続けてきました。
 その中には、群馬県のJR高崎駅前の量販カメラ店の騒色騒動事件、そして東京世田谷区のマンション屋上に取りつけられたファスト・フード店の赤色ネオン点滅事件などがあります。いずれも、何度も住民、自治体、企業間で話し合いを重ね、双方の歩み寄りで合意をみた公害事件でした。これらの事件の意味するところは大変重要です。まず、住民側からの声が挙がったと。マスコミ等も大きく取り上げ、自治体も立ち上り、時間をかけて問題の解決に取り組んだことです。単なる住民エゴの問題ではなく、『公共の場』における色彩問題を皆で考えたという事は大変意義深いと思います。
 しかし当会としても、文句をつけるばかりではいけないのではないか。全国で色彩を意識した良い事例を選んで顕彰しようと、85年度から「公共の色彩賞—環境色彩10選—」を設けました。毎年全国に一般公募して、市民に推薦してもらい(自薦でもよい)10件を選んで、こんな環境色彩はいかがか、と世に問うてきました。
 この色彩賞の特徴は、推薦された建築物などの対象物の色彩だけを取り上げて審査するのではなく、いかに周辺の景観を考えてつくられたか、また周りの環境に及ぼす波及効果、あるいは街づくりの過程で地域の人々がどのようにその色彩を決定するのに係わったかなどが考慮されることです。また、審査委員会も毎年新しいメンバーで構成され、一度落ちた事例が次の年に入選するという事もあるのです。昨年度の第八回までの入選対象は、85件数に及びます。
 ここで「公共の色彩」という時の「公共」という言葉についてお話ししなければなりません。「公共」という言葉を聞かれると、皆さんは多分、公共建築物、公共機関といったいわゆる行政の関与している公共物を思い浮かべられると思います。しかし当会では、私達が、自分の家を一歩外に出た瞬間から目にする、あらゆる環境、景観の色彩を「公共の色彩」と定義します。
 この意味で考えると、たとえ企業が所有するビルであっても、また一個人の住宅の外観でさえ「公共の色彩」と考えられます。バスや自動車などの乗り物をはじめ、屋外広告物しかり、橋や駅舎、またベンチや照明燈、サインなどのストリート.ファニチャーなどすべて街を構成している要素は「公共の色彩」として考えられるのです。極端に言えば、街を歩く私達自身の服装もその環境の中の色彩を構成していますね。
 このように考えてくるとお分かりのように、「公共」とは、プライベートな「私的空間」に対して、自分以外の他の人と共有する「公共空間」というです。この共有するという概念が、私達日本人には一番欠けている意識ではないでしょうか。共有というのは、自分のものでもあり、自分以外の人のものでもあるのです。「公共空間」は他の人と共に所有するという点で、自らそこには他を思いやるというマナー(作法)あるいはルールが必要になるのです。
 公共空間の作り手である建築家や都市プランナーといわれる人達は、デザインする時このマナーを守って、周辺環境の中でのデザインを心掛けなければならないでしょう。一方生活者の側は、公共空間は自分の場であるという意識があるならば、無関心ではいられないでしょう。
 この様に、行政、つくる側、生活者のそれぞれが、課せられたマナー、ルールを守り、お互いに高め合って初めて、快適で魅力ある街なみ景観が保たれるのだと思います。「公共の色彩を考える会」は、景観の中でも最も分りやすい色彩と言いう点を切り口にして、行政、つくる人、生活者の意識を高めるため、これからも運動を続けて行きたいと思います。
(平成5年6月22日 クボビル会議室にて)


田村美幸 財団法人日本色彩研究所内 公共の色彩を考える会
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