KANDAアーカイブ

神田学会
お知らせ 神田資料室 神田マップ 神田写真館 百年企業のれん三代記 神田の花咲かじいさん 出版物紹介 神田学会とは 神田学会資料請求 関連リンク Perspectives in English 神田アーカイブとは リンクについて 問い合わせ

神田資料室

KANDAルネッサンス 25号 (1993.04.20) P.13 印刷用

第51回神田学会レポート

もうひとつの政府・都庁

聖学院大学教授 佐々木信夫

 1200万人が住む東京都はGNPでみると、イギリス、イタリアについで世界7番目の経済力をもっている。その一国を支える都庁は、10兆円予算、20万人職員という巨大な組織である。中国、インドの国家予算に匹敵する財政規模の都庁は、一地方自治体を遥かに超えた存在である。「もうひとつの政府」といわれる所以はここにある。

都庁の移転
 都庁が元の丸の内から新宿まで6kmの移転をした。前都知事の美濃部亮吉は3期12年間その職を勤めたが、移転論は20年前の美濃部都政から論議されていた。彼の考え方は、そのまま丸の内で建て替えて、交通の便からして不便な西新宿には、都民ホール、婦人会館、福祉センターなど生活関連施設を置く案であった。しかし、折からの財政危機と美濃部退陣で振り出しに戻った。
 79年に鈴木都政の誕生となるが、彼ははじめから新宿副都心を完結させる一環として、新宿移転構想が頭にあったのではないかと思う。
 そして91年、新宿に総費用2400億円で完成した。(ちなみに土地代を除く建設費は1600億円で、土地売却1300億円、宝くじの売上300億円である。)元の都庁があった丸の内は、すぐ取り壊し、95年に国際フォーラムが完成する予定である。
都庁の経営
 都庁の財政は3割自治といわれる他の府県と違い7割以上を都税収入(地方税)で賄っている。地方政府の自立性という面ではこうした自前の財政収入が大きいほど自前の行政経営が可能となるだけに望ましい姿ということができる。ちなみに都税収入は5兆円で、うち法人2税約6割、個人2税2割となっている。
 だが、こうした法人税収依存型に財政は景気の影響をモロにかぶる構造的な欠陥をもっている。現在、都財政は危機的状況にある。
都知事の4つの顔
政治家の顔
 1200万人の都民から公選された代表者として政治公約を実現し、都民の利益、地域の利益を最大化する役割をもつ。
社長の顔
 財政規模10兆円、職員20万人を率いる巨大組織の経営者として、都民の信託に応えなければならない。ちなみに外部団体の兼務肩書きを170もつ。
地方代表の顔
 都知事は全国知事会長の指定席である。東京と地方という関係では、地方の利益のために「国にモノ申す」立場が全国知事会長のポスト、特に補助金行政、許認可行政が地方をしばるだけにその改善を迫る役割は極めて重要だ。
外交官の顔
 首都である都庁には国賓をはじめ、公式・非公式に多くの要人が表敬訪問する。これをもてなすのも大事な仕事。また国際交流時代のなか、外国に出かけ会議や都市首脳との交わりを増やすのも重要な役割である。この役割は今後ますます増すであろう。
税の還元
 納税に対して税還元率という数値がある。還元率が高いのは、島根、鹿児島、岩手、新潟、山口、高知で、例えば島根は税還元率3.0、税10万円に対して30万円の還元を県民は受けている。それに対し都民の税金還元率は0.3、10万円で3万円である。
 都税でも同じことがいえる。千代田区は0.1で、葛飾区、足立区などは0.4の還元率である。つまり一生懸命働いて納めた税金は、他の区に還元されているといってよい。還元率は公表されていないので、ほとんど知られていないのだが、これらの政治や行政コストや還元率について情報公開し、透明度を高めるべきだ。
世界一のオフィス街
 昭和60年以降、東京区部は内需拡大、再開発促進政策により、この7年間で、川崎、横浜、立川、八王子、浦和、大宮、千葉、幕張の8都市分のオフィスの総床面積分が東京にプラスされ、これでニューヨークのマンハッタンを超えた。そして東京の区部は、世界で一番大きいビジネス都市となった。毎年4万人ずつ就業者が増え、90年代はこのペースがずっと続くと思われる。東京圏70km以内の常住人口は20万ずつ増えているが、東京は多摩に2万増えているだけである。つまり内から外へ移り住み、働く場は都心部へ向いてくる。このまま一極集中が続くと、千代田区の抱える昼間と夜間人口差問題はどんどん広まり、いつしか区同士の合併問題へと発展していくのではないだろうか。
千代田区の存亡は経済都市の側面ではなく生活都市の側面から問われているのであり、行政はこの真の政策をもっと真剣に考えるべきだ。
(平成5年2月26日/クボビル会議室にて)

参考図書 岩波新書「都庁 もうひとつの政府」佐々木信夫著


佐々木信夫 聖学院大学教授
ページの先頭へ

戻る

ホーム ホーム