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神田資料室

KANDAルネッサンス 10号 (1989.07.15) P.16 印刷用
彫刻が町にやってきた10

「舟乗大黒」

鈴木久雄

 子供達にとって大黒(大国)さまは因幡の白兎、昔語りの中のやさしいおじいさんである。祭礼の神輿をかつぐ血気さかんな若者達にとって、大黒さまは祭情趣の中の点景である。長じて、世の中の不可知なる事、現代にても多々あることに気づく齢いとなった者達にとって、大黒さまは人事を盡くした後の天の加護を徴わす存在となる。
 神田の街角での私の彫刻、二作目はこの大黒さまが主題である。
 大黒さまは仏教の守護神の一つ、大黒天であり、又、七福神の一つとして大国主神と一体となり、福徳を与える神として広く民間信仰にとり入れられてきた。大国主神は神田明神の氏神でもあり、その意味では神田の町とも縁の深い神様でもある。
 その定形は米俵を踏まえ、頭巾をかぶり、大きな袋を負って打出の小槌を持つといったものである。彫り刻んでいく私の課題はこうした大黒さまの福徳の象徴としての古来からの心を伝えると同時に、現代意匠の建築物の一角にそれと対応できる造形物としての形態を創り出すというところにあった。形の検討、曲折の後に、大黒さまが舟に乗る……。舟は豊かな時の流れ、未知なる世界への意気を示し、同時に大黒さま本体の量魂の強い形態を下部で鋭くひきしめるという造形意図を含む。「舟乗大黒」の形の基本はこんなところから生まれている。
 用材はインド産の黒御影石である。大黒天の源の地、インドのデカン高原から運ばれた硬質の石材によって大黒さまを彫る。こんな単純な符合も作る者にとっては不可欠なめぐり合わせとも思えるものである。

大黒天の発生の地インドの御影石で作られた「舟乗大黒」。舟に乗ったその独特の姿は、未知なる世界への意気を表わしている。
(千代田区内神田1-16-8 三立社・濱野ビル)



鈴木久雄 武蔵野美術大学教授
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