KANDAアーカイブ

神田学会
お知らせ 神田資料室 神田マップ 神田写真館 百年企業のれん三代記 神田の花咲かじいさん 出版物紹介 神田学会とは 神田学会資料請求 関連リンク Perspectives in English 神田アーカイブとは リンクについて 問い合わせ

神田資料室

KANDAルネッサンス 9号 (1989.04.20) P.21 印刷用
彫刻が街にやってきた9

「大黒天」

山下恒雄

 昔よく云われたことですが、家や町や村、ひいては国などを支えている中心人物を大黒柱などと云ったものです。今日でも時折聞くことがありますが、だいぶ少なくなったように思います。
 それもそのはずで、昔の家には並の生活をしていた農家などにも必ず大黒柱のある家に住んでいたものです。そして一家が繁栄するにはそこの大黒柱がしっかりしなくてはいけないなどと云われ、その家の主人は一家のため奮励努力をしたのであります。
 町や村にも大黒柱が居りました。そしてその町や村の住宅にその土地その土地の特色と個性がありました。そして何よりも自然とのかかわりが美しく配慮されていたように思います。
 大きな都市でも今日のように画一的な都市形成で全国どこの街でも同じような景観で、特色のある街は見あたりません。更に住宅に於ては経済性に基づいた合理主義一点張りの住宅で、環境上も豊かな人間生活の大切な場としての住空間と成り得ない方向へと進んでいるように思います。
 矛盾の多い人間社会ですが、自然の中での一員としての人間生活において、より自然(気候風土)と強いかかわりの保てる住空間、都市、町、村づくりが必要のように思います。
 神田佐久間町柴田ビルの大黒天は、鋼板15mm厚を鎚起技法を用いて金鎚をもって叩き出した(絞り加工技法)、我が国では数少ない大変珍しい作品だと思います。この様な技法で作られたものは、古くは奈良時代に作られた押出佛や佛像や佛具、鎧、甲冑などがあり、その技法が今日に受け継がれている技法であります。
 その大黒天とは広辞苑によりますと、「梵語:Mahakala・摩訶加羅」 1.密教では自在天の化身で、仏教の守護神。戦闘神あるいは忿怒神、後に厨房神とされる、2.七福神の一。その姿は、頭巾をかぶり、左肩に大きな袋を負い、右手に打出の小槌を持ち米俵を踏まえる。我国の大国主神と習合して民間信仰に浸透、「えびす」と共に台所などに祭られるに至る。
 三宝(仏・法・僧)を愛し、飲食を豊かにする神、福徳の神として多くの人々に親しまれている。

米俵を踏まえ、どことなくユーモラスな大黒天。佐久間町の人気者である。
(千代田区神田佐久間河岸78-3 柴田ビル)



山下恒雄 東京芸術大学教授
ページの先頭へ

戻る

ホーム ホーム