彫刻が街にやってきた8
「守護神の石」
関根伸夫
かつての街道や町角には野仏や道祖神、観音像、あるいは道しるべがあった。旅ゆく人々の風景の移りかわりにこれらはリズムを与え、さまざまな想いを込める場所でもあった。
「守護神の石」は、このような人々の日々の暮しの風景のなかで、心の拠り所であった点景というものを、現代の街なかに、見出しようとするものであった。あわただしく街ゆくなかで、ふとめぐりあう、ささやかな安らぎを与えてくれる点景。人々の記憶の何処かに位置をしめてしまって、風景にまた心にアクセントを与えてくれる点景。少しユーモラスで、どこか宗教的な思いを暗示する点景。そうした人々の思いを見守るものとして「守護神の石」と名付けた。末長く人々とお付き合い頂くことを願っている。
街のなかは、機能一遍倒となったサインが所狭しとひしめきあって、街の景に「ゆとり」が失われてしまっている。街のなかを右往左往するとき、心のオアシスとも言うべき、安らぎを与えてくれる風景のさまざまな点景が現代にはもっとあって如るべきだと思う。
「景」のなかに「ゆとり」や「安らぎ」「ふぜい」を与えるものを仕つらえてゆくこと、それは環境美術にになわされた大きな役割の一つだと思っている。
今日もまた「守護神の石」は街ゆく人々と、さまざまな話を交していることだろう。
神田駅西口通りに面する「守護神の石」。機能ばかりが優先の現代において、「ゆとり」や「安らぎ」が感じられる数少ない場所の一つだ。
(千代田区内神田1-10-9 高木ビル)
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